労働条件の不利益な変更(賃金が減額された場合など)について

相談内容

先日、私は突然会社の上司に呼び出され、突然給料が30万円から25万円に下がることに同意してほしい、と告げられました。

私にも生活がありますので、とてもそんな同意はできないとも思ったのですが、上司は、「今会社が本当にやばい。このままの給料を払っていたら、倒産してしまう。そうすると25万円どころか1円も払えなくなるよ」と強く言うのです。

そこまで言われたので、私も渋々会社が準備した「賃金引き下げに関する確認書」という書面にサインをしてしまいました。

この変更には応じないとダメなのでしょうか。

 

回答

賃金の引き下げ等労働条件の不利益変更については、労働者が真の同意が必要で、そう簡単には認められません。

 

解説

1 使用者が一方的に労働条件を不利益変更することは許されない

労働契約法8条では、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」と規定されています

この規定は、労働契約の内容である労働条件の変更について労使間の合意を求めたもので、使用者による一方的な変更を許さない趣旨と言われています。

まずこれが大原則です。

したがって、労働者の同意もなく、使用者が賃金等の労働条件を一方的に切り下げるのは無効です

その場合、切り下げられる前の労働条件に従った請求ができます。

 

2 合意による労働条件の変更

相談者の方は、一応書面にはサインをしてしまったようです。

では、合意さえあれば労働条件の不利益な変更も許されるのでしょうか。

相談者の方のように、サインするしかない状況で、労働条件の不利益な変更に同意することもあります。

しかし、普通に考えれば、使用者から「サインしろ」と迫られてしまうと、そう簡単には断ることができないのが労働者です。

強制や強要とまではいえなくても、「しかたないなあ・・・」と、不本意ながらも同意をしてしまうことが多いのが実際です。

そうした観点から、労働条件変更に関する労働者の同意は、自由意思に基づく必要があります

つまり、「労働条件が不利に変更されてもよい!」と納得して同意することが要求されるのです。

その前提として、使用者からの十分な説明・情報提供が必要です(労働契約法4条1項)。

たとえば、賃金の引き下げに関して、「労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由」が要求されるとした裁判例があります。

賃金の引き下げの同意はそう簡単ではない、ということです。

 

3 労働条件の変更を求められた場合に気をつけるべきこと

⑴ 安易なサインをせず、とりあえず持ち帰る

このように、労働条件の不利益変更は安易には認められないのですが、そうは言っても、たとえば、労働条件変更に関する合意書、確認書、さらには新しい労働契約書等にサインをするのは禁物です。

こうした書面は、基本的にはその内容についての合意を表す証拠です。

労働条件変更に合意した、という証拠になってしまうことは間違いありません。

基本的には、労働条件の変更について慌てて回答する義務はありません。

会社から労働条件の不利益な変更を求められた場合は、「家族と相談してから決めます」など、理由は何でも良いので、即答しないことが肝要です。

⑵ 解雇や退職を盾にして労働条件の不利益変更を迫られた場合

これも同じですが、この場合、会社からの十分な説明・情報提供を求めるべきでしょう。

労働条件の不利益変更と、業績不振による整理解雇がセットになるケースもありますが、会社がどうしてそういう状況にあるのか、そして、なぜ自分がそうした不利益を受けなければならないか、十分な説明を受けてから判断する必要があるのは当然のことです。

やはり、迫られて即答しないこと、持ち帰ってよく考えることが大切です

 

4 労働条件の不利益変更に同意をしてしまったときの争い方

⑴ 「自由な意思」による真の同意がない

さきほどお話したとおり、「自由な意思」で同意をしていない、ということで争うこともできるでしょう。

特に賃金の引き下げ等の場面では、その自由な意思を認めることができるだけの客観的な状況が必要であるとされるのが実務の考え方です。

⑵ 詐欺取消・錯誤無効の主張

他には、会社が嘘を言ってサインをさせた場合、詐欺による取消(民法96条)によって、同意を無効と主張することはあり得ます。

たとえば、相談者の方のケースで、会社が本当は全く業績不振に陥っていなかった場合があり得るでしょう。

勘違いだということで、錯誤による無効(民法95条)という主張もあり得ます。

⑶ 強迫による取消

また、会社の同意の取り方が、あまりにも強硬で、「強迫」になる場合はその同意を取り消すという主張もあり得ます(民法96条)

何人にも取り囲まれて、何時間もサインを迫られ続けた、等の同意を取り付ける状況がポイントになります。

 

5 就業規則等の変更による労働条件の不利益変更

以上とは別に、労働者との個別の同意がない場合でも、就業規則の変更等によって労働条件が変更されることがあります(労働契約法9条)。

とはいえ、就業規則の変更は、その変更が合理的であり、かつ変更後の就業規則が労働者に周知されている等の所定の要件を満たす必要があります(労働契約法10条)。

就業規則が知らないままに変更されていたケースでは、その変更自体が有効かどうかを吟味する必要があります。

結構勝手に変更している会社が多いので、注意が必要です。

 

6 労働条件の不利益な変更をされた場合(されそうな場合)は弁護士に相談を!

⑴ 差額賃金の請求を行う

特にトラブルとして多い労働条件の不利益変更は、賃金の一方的な引き下げです。

この場合、労働条件の一方的な引き下げを無効として、今までの賃金に従った請求をすることができます。
→具体的な解決手段はこちら

⑵ 弁護士相談の勧め

ただ、たとえば労働条件が引き下げられそうだ、とか、実際にそうした会社からの提案があった場合、適切な対応をしていくことで、無用な紛争が避けられることも多いです。

労働条件の決定は、使用者と労働者の合意によって成り立つものです。

事前に会社とのトラブルを防ぐためには、労働案件の経験のある弁護士への相談は不可欠かと思います。

そうした弁護士であれば、いたずらに訴訟や労働審判などの手続に飛び込むのではなく、労働者の方の今後の生活を見据えた、よりよい解決方法をご提案することができるのです。

お悩みの場合はすぐご相談していただくことをお勧めします。

 

労働問題のお問い合わせ

 

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