Archive for the ‘コラム’ Category

旅館・ホテルは新型コロナウイルス感染の疑いがある宿泊客の宿泊を拒否できるか?

2021-02-17

弁護士法人戸田労務経営です。

 

2月16日、千葉県中小企業団体中央会主催で、千葉県内の旅館・ホテル業の企業向けの研修を担当しました。

「新型コロナ禍を乗り切る!企業の労務・法務対応」というタイトルです。

旅館・ホテル業界は今非常に厳しい状況にありますが、何とかこの危機を乗り切っていただきたいと思っています。

 

さて、その中で話題になったのは、やはり感染者・感染疑いの方への対応でした。

 

1 新型コロナウイルス感染の可能性・症状があるだけで宿泊を拒否できるか

【質問】

新型コロナウイルス感染予防のため、「37.5度以上の発熱の方や風邪症状のある方」等の宿泊をお断りしたいと思っているのですが、問題はないのでしょうか。

【回答】

単に、体調不良(軽い発熱、咳症状等がある)というだけでは宿泊をお断りするのは難しいというのが結論です。

ただ、新型コロナウイルス感染がPCR検査で陽性となっている場合、又はかなりの高熱が続いている方の場合は、感染症疑いによって拒否できる可能性があります。

 

【解説】

宿泊客の宿泊拒否という対応は、下記旅館業法との兼ね合いで問題が生じます。

○旅館業法(昭和23年法律第138号)

第五条 営業者は、左の各号の一に該当する場合を除いては、宿泊を拒んではならない。
 一 宿泊しようとする者が伝染性の疾病にかかつていると明らかに認められるとき
 二 宿泊しようとする者がとばく、その他の違法行為又は風紀を乱す行為をする虞があると認められるとき。
 三 宿泊施設に余裕がないときその他都道府県が条例で定める事由があるとき。

上記でいえば、「伝染性の疾病にかかっていると明らかに認められるとき」という判断は非常に難しく、PCR検査で陽性結果が出ているにも関わらず宿泊しようとしたケースでない限り難しいと思われます。

もっとも、38度以上等の相当の高熱が出て数日間も経過しているような方の場合は、新型コロナの他、インフルエンザの感染疑いもありますので、上記5条①に該当して拒否できる余地はあります。

発熱がある等という状態のみでは、単なる風邪の可能性もありますし、上記5条①の拒否要件には該当しないかと思われます。

 

2 感染防止措置に協力してくれない宿泊客について

【質問】

宿泊客の方には、マスク着用、消毒、検温を徹底しています。

ほとんどのお客様はご協力していただけるのですが、時に理由もなく拒否される方もいます。こういった方に宿泊をご遠慮いただくことはできるのでしょうか。

【結論】

単に拒否した、というだけでは旅館業法5条違反になる可能性が高く、拒否はできません。

ただ、何の理由もなく、マスクも消毒も協力しない、暴言を吐いて旅館側のお願いを全く無視する等の事情を総合的に見た場合に、周囲の宿泊客への風紀を考慮して宿泊拒否することもあり得るかと思います。

【解説】

確かに、昨今の新型コロナウイルス感染症予防の必要は高く、マスク着用、消毒、検温その他の感染予防措置は宿泊客の皆様にも必要なことです。

ただ、こうした点はあくまでも任意に協力を求めるにとどまりますので、強制的な命令は難しいでしょう。

そのため、単純に拒否しただけでは宿泊拒否は難しいと思われます。

 

ただ、問題は感染防止措置を正当な理由なく拒否し続けるケースです。周囲の宿泊客への迷惑を省みずに宿泊し、周囲への迷惑を及ぼす場合は問題です。

こうした場合は、上記旅館業法5条②「風紀を乱す行為をする虞があると認められるとき。」に該当するかどうかです。

難しい判断ではありますが、たとえば風邪症状がありつつ何の理由もなく、マスクも消毒も協力しない、暴言を吐くなどなどの事情がある場合はどうでしょうか。

こうした問題行動を総合的に見た場合に、周囲の宿泊客への風紀を考慮して宿泊拒否することもあり得るかと思います。

続・新型コロナウイルス関連の企業の資金繰り(助成金・給付金)

2020-04-14

弁護士法人戸田労務経営です。

先日新型コロナウイルス感染症の影響に対する各種の公的支援策についてご紹介しましたが、今回は、その後追加・変更された支援策のうち、特に給付金・補助金に着目してご紹介したいと思います。

この国家的試練を乗り越えるため、利用できる制度は上手に利用しつつ感染拡大を少しでも抑えていきましょう。

4月14日時点の情報となりますのでご注意ください

 

雇用調整助成金の特例措置(変更)の活用

まずは雇用調整助成金です。
従前よりある助成金ですが、売上減少がある際に、従業員の雇用を維持することを前提として受給できる助成金です。

雇用調整助成金の申請手続が大幅に簡素化されました。

助成金支給までの期間も従来2ヶ月ほどかかっていたところを1ヶ月ほどに短縮させる見込みです。支給要件も従前のものより大きく緩和されていますので、休業する場合には積極的に活用を検討したい助成金です。

特に、最近は労働弁護団やユニオンから、整理解雇を検討する際にはこの雇用調整助成金の受給を検討すべきとの主張がされることも多いです。安易に人員削減をする前に受給できないかどうかを検討することは必須かと思います。

ただ、受給のためには事業所自体が労働基準法などを完全に遵守していることが前提にされているということもあり、労務管理が不十分な中小企業においては申請自体が難航するケースもあるという話も聞いています。

対象事業者:直近1ヶ月の売上等が前年同月比5%以上減少した事業主

手続要件:休業に関する労使協定を締結する等(詳しくは厚生労働省HP)

助成率:中小企業4/5、大企業2/3(解雇を伴わない場合:中小9/10、大3/4)

厚生労働省:雇用調整助成金

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html

雇用調整助成金の申請書類を簡素化します

https://www.mhlw.go.jp/content/000620880.pdf

「雇用調整助成金ガイドブック(簡易版)令和2年4月13日現在」

https://www.mhlw.go.jp/content/000621160.pdf

 

持続化給付金(新設)

新型コロナウイルス感染症拡大により特に大きな影響を受ける事業者に対して、事業の継続を下支えして再起の糧とするために給付されるものです。

詳細は4月最終週を目途に確定・公表される予定です。

対象事業者:前年同月比50%以上の売上減少

給付額:昨年度の売上からの減少分(法人上限200万円、個人事業主上限100万円)

経済産業省:持続化給付金に関するよくあるお問合せ

https://www.meti.go.jp/covid-19/jizokuka-qa.html

 

生産性革命推進事業(変更)

令和二年度補正予算により、IT導入補助金、ものづくり・商業・サービス補助金、小規模事業者持続化補助金の補助率・補助上限が引き上げされる予定になっています。

中小企業基盤整備機構

https://seisansei.smrj.go.jp/

 

生活支援臨時給付金(仮称・新設)

企業向けではなく個人向けの給付金になります。新型コロナウイルス感染症の影響で休業等により収入が減少した世帯の生活維持のための臨時支援を目的とした給付金です。世帯主の月間収入が住民税非課税水準となる世帯が対象です。

給付額:1世帯あたり30万円

総務省:生活支援臨時給付金(仮称)

https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/gyoumukanri_sonota/covid-19/kyufukin.html

 

 

 

【お知らせ】新型コロナウイルスに対する事務所対応について

2020-04-07

弁護士法人戸田労務経営です。

新型コロナウイルスの影響と、本日発令予定の緊急事態宣言を見越して、当事務所では以下のとおりの対応とさせていただきます。

① 面談のご相談・打合せを原則差し控えさせていただきます。

 外出自粛要請を受けまして、当事務所でも原則として面談相談は当面差し控えさせていただきます。

 依頼者様、顧問先企業様については、電話・メール・chatwork・ビデオ会議等を活用させていただきます。

 新規相談についても基本的に受付を控えさせていただいておりますが、緊急にご相談をご希望される企業側のご相談に限りまして、電話・ビデオ会議相談を実施できる場合があります。お問合せ下さい。

 

② 事務職員は基本的に在宅勤務となり、電話対応にお時間を要することがあります。

 当事務所の事務職員については原則在宅勤務を実施しています。

 原則折り返し対応になり、折り返しにお時間を要することがありますので、何卒ご了承下さい。

 

③ 緊急に相談・打合せを実施する場合は、マスク着用・手指の消毒にご協力をお願いします。

 依頼者様・顧問先企業におかれまして、緊急にお打合せを実施する場合は、恐縮でございますが、マスクの着用と面談前の手指の消毒をお願いしております。

 弁護士においてもマスクを着用しますので、ご了承下さいませ。

 

 

 

緊急事態宣言に伴う企業の労務対応(休業手当を払うべきか?)

2020-04-06

緊急事態宣言に関する企業からの相談(休業手当について)

当社は都内と千葉県内で多数の学習塾を経営する企業なのですが、緊急事態宣言が発令されると学習塾も休止要請の対象になってしまいます。

さすがにこれを無視するわけにはいかないため、全教室休校としました。一部の事務職員を除いて在宅勤務も困難でして、基本的には休業するしかありません。

ただ、この宣言がいつまで続くのかもわかりません。当社の売上も激減してしまうところですが、従業員への休業手当・休業補償はどうすればよいのでしょうか。

巷では休業手当として60%を払わないといけないという話も聞きますが、うちの状態ではそれも厳しいかもしれません。法的な見解を教えてください。

(さらに…)

新型コロナウイルス関連の企業の資金繰り(融資・助成金)

2020-04-02

弁護士法人戸田労務経営の代表弁護士の戸田です。

新型コロナウイルスの影響が広がり緊急事態宣言の発令も現実味を帯びてきています。

この危機的状況を乗り越えるため経済面での支援(融資、保証、助成金等)が公的機関から複数だされていますが、どこからどのような制度が打ち出されているのか、全体像が見えづらくなっています。今回はこれらの支援策について網羅的にまとめてみたいと思います

※情報は令和2年4月2日現在のものですので、ご了承下さい。

融資関係

まずは融資関係です。返済義務はありますが、当面の資金繰りのための現金を確保するための制度として活用できます。

・新型コロナウイルス感染症特別貸付

売上高の減少などの一定の要件を満たした中小企業等無担保・低減金利で融資を受けられる制度です。当初3年間の金利が基準金利より0.9%低減されます。融資限度額は国民生活事業6000万円、中小企業3億円。

特に影響が大きい事業者には、当初3年間の金利が実質無利子となる「特別利子補給制度」も新設されています(具体的な手続きについては漸次決定)。

日本政策金融公庫:https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/covid_19_t.html

 

・商工組合中央金庫による危機対応融資

商工中金でも日本政策金融公庫の特別貸付と類似した融資制度を設けています。

商工組合中央金庫:https://www.shokochukin.co.jp/disaster/corona.html

 

経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付

外的要因により一時的な業状悪化をきたした中小企業等に対する融資制度です。従来設定されていた「売上高が5%以上減少」等の数値要件が緩和され、広く中小企業等が融資対象になりました融資限度額は国民事業4800万円、中小事業7.2億円。金利は貸付期間や担保の有無等にて変動します。

日本政策金融公庫:https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/07_keieisien_m.html

 

・小規模事業者経営改善資金(通称「マル経融資」)

商工会などの経営指導を受けている小規模事業者が、経営改善に必要な資金を無担保・無保証人で利用できる制度です。融資限度額は2000万円。

日本政策金融公庫:https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/kaizen_m.html

 

生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付

生活衛生関係事業者についてはさらに別枠での融資制度があります(生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付、衛生環境激変対策特別貸付、生活衛生改善貸付など)。

*飲食業などのうち事業規模の小さいもの参照:https://www.jfc.go.jp/n/faq/pdf/yusi_m.pdf

日本政策金融公庫https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/covid_19_seiei_m.html

 

信用保証

経営安定関連保証(セーフティネット保証)、危機関連保証

売上高の減少等一定の要件を満たした中小企業等が市区町村長の認定を経ることで、融資を受ける際に信用保証協会による信用保証を受けることができる制度です。保証限度額は、普通保証2億円、無担保保証8000万円。

全国信用保証協会連合会:https://www.zenshinhoren.or.jp/model-case/keiei-shisho.html

 

補助金、助成金

生産性革命推進事業

(1) IT導入補助金

ITツール導入によって業務改善・効率化を目指す中小企業が対象です公募により採否決定がされますが、その際テレワークの導入に取り組む事業者優先的に加点されます補助率1/2(上限150万)1次公募は令和2年3月末ですでに終了していますが、令和2年6月、9月、12月に公募が行われる予定のようです

中小企業基盤整備機構:https://seisansei.smrj.go.jp/

IT導入支援事業事務局:https://www.it-hojo.jp/2020emergency/

 

(2) ものづくり・商業・サービス補助

中小企業の新製品新サービス開発や生産プロセス改善のための設備投資を補助する制度です。感染症の影響で新たに導入した設備投資等も対象になります。補助率は会社規模により1/2~2/3で上限1000蔓延です。第2次公募が4月20日から申請開始になっています。締め切りは5月20日です。

ものづくり補助金事務局:http://portal.monodukuri-hojo.jp/

 

(3) 小規模事業者持続化補助

小規模事業者の販路開拓等のための取り組みを支援する制度です。補助率は2/3(上限50万円)。感染症の影響により売り上げ減少等があることが採否決定の際に加点要素となります。第2次公募締め切りが6月5日となっています。

全国商工会連合会:http://www.shokokai.or.jp/jizokuka_r1h/

 

 

・働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)

新型コロナウイルス感染症対策のためテレワーク導入に向けた一定の取り組みをし、かつ、実際にテレワークを実施した労働者が1人以上いる中小企業が支給対象です助成率1/2(上限100万円)交付請求期限は令和2年5月29日です。

厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/syokubaisikitelework.html

 

・雇用調整助成金

経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が雇用の維持を図るための休業手当を要した費用を助成する制度です。新型コロナウイルス感染拡大に伴って特例措置により助成対象や助成額の拡充が行われています。助成率令和2年4月1日時点中小企業4/5、大企業2/3(解雇等を行わない場合は中小企業9/10、大企業3/4)です。特例措置は6月30日まで継続される予定になっています。

厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html

 

・新型コロナ休暇支援助成金

令和2年2月27日から3月31日までの間に新型コロナウイルス感染症に関する対応として臨時休業等した子供の世話をするために保護者に有給休暇を取得させた事業主に対する助成金制度です。助成額は有給休暇を取得した対象労働者に支払った賃金相当額(上限8330円)。申請期間は6月30日までとなっています(法人ごとにまとめて申請)。

厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07_00002.html

 

猶予制度

厚生年金保険料、国税・地方税納付猶予

災害を受けた場合や著しい損失が出た場合に、社会保険料や税金の納付猶予が認められることがあります。

日本年金機構:https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2020/202003/20200304.html

国税庁:https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu_konnan.htm

 

 

<参考>

経済産業省の新型ウイルス感染症関連ページが経済支援面での施策がコンパクトにまとめられていて参考になります。漸次更新されていますので最新の情報を確認する場合にはまずはこちらをご参照ください。

https://www.meti.go.jp/covid-19/

 

 

 

 

テレワーク(在宅勤務)で行うべき規則制定と労務管理

2020-03-11

弁護士法人戸田労務経営の所長弁護士の戸田です。

新型コロナウイルスの影響が大きく、時差出勤やテレワークの活用が叫ばれていますね。

いずれも東京オリンピックに向けての導入が推奨されていた制度ですが、このような形で前倒しになるとは予想外でした。

今回、テレワークの導入についてのご相談が多いため、導入に際して気を付けるべき基本的な労務管理をまとめてみました。

中小企業であっても、IT 企業を始めとして導入が検討できる企業もありますので、参考になれば幸いです。

1 テレワーク実施のために必要な規定

 テレワークを実施するためには、最低限以下の規定が必要と言われていますので、まずは就業規則の整備を検討してください。

 もちろん、今回の新型コロナウイルス蔓延の際に、各従業員の事実上の同意を取って導入することはあり得るかと思います。

 ただ、その場合であっても、可能な限りのルール作りをして、従業員の方との協議をしておくのが重要かと思います。

 

① 在宅勤務を命じることができる定め

 従業員に対してテレワークするよう、在宅勤務命令を行うための根拠規定です。

 テレワーク(在宅勤務)について、中には抵抗がある従業員の方もいらっしゃる可能性がありますので、一律にテレワークを実施するにはこうした根拠規定を作ることが望ましいです。

 

② テレワーク(在宅勤務)用の労働時間を設ける場合、その労働時間に関しての定め

 在社勤務での就業時間と全く同じであれば必要ありませんが、在宅勤務特有の労働時間を設定するのであれば、労働時間・休憩時間を定める必要があります。

 テレワーク(在宅勤務)は、労働時間が曖昧になると管理ができませんので、始業時間・終業時間は何時かを明記して定めるべきでしょう。

 特に、通常変形労働時間制やシフト制を採用している企業については、別途始業・終業時間を決めた方がよいですね。

 

③ 通信費の負担に関しての定め

 費用負担は決めておく必要があります。

 テレワーク(在宅勤務)の場合、パソコンやスマホは会社から貸与することが多いですが、この場合の費用負担は全額会社とするのが通常です。

 その他のブロードバンド回線の基本料や通信費等の負担は、個人使用との線引きが難しいので全額会社負担とする必要はありません。

 いずれにしても、こうした費用負担を従業員にさせる場合は就業規則への定めは必須です。

 

④ 社内教育・研修についての定め

 テレワークを実施する前段階では、業務の仕方や報告方法等を含めた研修を実施するのが望ましいと言われます。

 社内教育や研修実施について定めておくのがよいでしょう。

 

⑤ 業績評価、人事管理について(要検討)

 出社する従業員とは異なる業績評価・人事評価をするのであれば、あらかじめその基準を決めておくことが無難です。

 

2 規定方法

 就業規則の中に条項を入れる方法でも、就業規則とは別建てのテレワーク勤務規程(在宅勤務規程/サテライトオフィス勤務規程等)を新設する方法でもよいです。

 

3 テレワークでの労働時間管理

 導入に当たって問題となるのは労働時間管理です。「テレワークを導入したいけど、家で勝手な勤務をされても困る・・・」等という声が多いところです。

 この労働時間管理がルーズですと、結局仕事をしないでダラダラ一日過ごして終わり、という事態にもなりかねません。

 テレワークは性善説を前提にしている、という意見も耳にしますが、まずは企業としてできる限りの労働時間管理を行うことが大前提です。

 

① 始業・終業時間の管理

 まず、報告方法と記録方法についてのルール化はかなり重要です。

 これについては導入のしやすさだけでなく、管理・運用のしやすいものを検討しなければなりません。

 ・電子メール

 企業で最もよく使われているのは電子メールと言われています。全員が使い慣れたツールという意味では導入は早そうですね。

 ・電話

 シンプルに電話でもよいですが、記録の手間がかかることと在宅勤務者が多い場合には使いにくいのがデメリットです。

 ・チャット等(LINE、チャットワーク、スラック等)

 いわゆるグループチャットも有効かと思います。在宅勤務用のグループを作っておいて、そのグループに投稿する方法です。

 最近はLINEを企業内の連絡に使っている企業も増えていますし、多くの従業員が利用していることからすれば、導入しやすいツールですね。

 ただ、ビジネス向けのチャットツールとしては、チャットワーク(Chatwork)やスラック(Slack)も便利です。

 ・スケジュール・勤怠管理ツールの利用

 各自が直接入力する形を取ることができるので、大人数でも管理しやすく、入力内容をわざわざ管理としては最も簡便です。

 様々な勤怠管理システムがあります。

 費用が許せばテレワークに対応したシステム導入は是非検討したいですね。

 

 ② 業務時間中の在席・離席確認

 自宅で育児を行っている従業員等、業務の中断があり得ます。休憩時間の運用も必要です。

 業務中断についての運用ルールを定めておくことが必要です。

 たとえば、労務管理ツールで休憩記録をする、その他離席時点、戻ってきた各時点でメール・チャットで連絡する方法等です。

 

 ③ 業務内容の管理

 いわゆる日報等の作成をさせることですね。

 ダラダラ勤務を防止するためには、労働時間の管理にも関連するところかと思いますが、業務については時間割のような形で内容の記録をさせることも検討しなければなりません。

 労務管理ツールで、業務内容や成果を記録できるものもあるようなので、検討してみるとよいかと思います。

 

4 テレワークの導入等の働き方改革についてはご相談ください

 テレワーク(在宅勤務)については、費用面や上記労務管理について色々ハードルがあるのが現状です。

 ただ、今回の新型コロナウイルスの影響から、導入に踏み切る企業も多くなっています。

 適正な労務管理についてのルールと制度設計を前提に、その運用をしっかりと行っていけば、新しい勤務形態を作り出すことができるかもしれません。

 弁護士法人戸田労務経営は、こうした働き方改革に関するご相談も数多く扱っております。

 いつでもご相談下さい。

 

 

 

 

新型コロナウイルスに関する企業の労務対応

2020-02-16

弁護士法人戸田労務経営です。

新型コロナウイルスの拡大が止まらず、心配な日々が続きますね。

さて、当事務所の竹口英伸弁護士は、医師免許を持ち、現役産業医としても活躍をしていますので、新型コロナウイルスの感染についても日々対応をしております。

そこで、今回の新型コロナウイルスへの対応について、竹口弁護士による医療の観点を含め、所長弁護士の戸田が労務対応をまとめました。

 

新型コロナウイルスの現状

 報道のとおり、新型コロナウイルスは感染経路が追跡不可能な患者が出現し、感染力はインフルエンザと同等程度という報告もありますが、ここははっきりしていません。
 
 この新型コロナウイルス、潜伏期間は1〜12.5日(多くは5、6日)ですが、無症状潜伏期間中の患者から感染したとする報告もあります。日に日に感染者が増えている現状です。
 
 新型コロナウイルスの致死率は約2%程度で、インフルエンザ0.1より高く、SARS10%)より低いイメージですが、予断を許さない状況です。
  
    現在、一般医療機関では診断の検査はできません。
 地方衛生研究所、国立感染症研究所、受託民間会社でのみPCR検査で診断できますが、検査件数制限のため、PCR検査は渡航歴や接触歴等の一定の要件をみたした場合に限り行われる取り扱いです。

 

感染が疑われる従業員に対する措置

 さて、新型コロナウイルスに感染したと疑われる従業員がいる場合、企業はどのように対応するべきでしょうか。
 

①   保健所への連絡

 まずその従業員から「帰国者・接触者相談センター」(保健所内。連絡先は下記<参考>連絡させる必要があります。
    その後、保健所から具体的指示がある場合はそれに従って下さい。
 

②   自宅待機命令(給与を支払うべきか?)

 保健所から具体的な指示がなくても、安全確保・危機管理の観点から会社判断で自宅待機を命ずることはできます
 潜伏期間に照らせば14日間程度が妥当でしょう。新型コロナウイルスが疑われるような症状(発熱や咳など)があって就労が不能の状態であれば、通常の病気欠勤と同じくノーワークノーペイとなります。無給でも問題ありません
 
 これに対して、症状のない従業員に自宅待機を命じる場合には休業手当(労基法26条。平均賃金の60%)の支払いが必要となります。
 在宅勤務を命じる場合は正規の賃金の支払が必要となります。

 

感染者が発生した場合

 次に、従業員が新型コロナウイルスに感染していることが判明した場合の具体的な対応についてです。
 

①  保健所からの連絡

 従業員が新型コロナウイルスに感染していることについて、保健所からの連絡によって判明することがあります。
 
    新型コロナウイルス感染患者を診断した医師は、直ちに保健所に届出します。
 この時、確定診断例だけではなく、擬似症患者(渡航歴・濃厚接触歴、症状等から判断も届出の対象となっています
 
 医師からの届出を受けた保健所は、情報収集のために関係者に対して質問・調査するができるため(積極的疫学調査:感染症法15条)、会社にはこの段階で保健所から連絡が入ることになるのです。
 ですので、保健所から連絡が入った場合は、可能な限り調査に協力し対応相談してください
 
 

②   従業員本人からの申し出によって感染が判明した場合

 保健所から連絡が入る前に、本人からの連絡等で感染者発生が判明することもあります。
 そうした場合も、会社は速かに保健所に連絡して指示を受け対応を相談してください
 
 

③  知事からの強制入院・就業制限指示がされた場合の企業の労務対応は?

  都道府県知事は、感染者を強制入院させることができます感染症法19条)。この場合の入院費は公費負担です。
 また、都道府県知事から、就業制限指示がされることもあります同18条)
 
 こうした場合原則として賃金を払う必要はありませんもはや使用者の責に帰すべき事由による休業」(労基法26条)にあたらないので、ここもノーワークノーペイになるからです。
 ただし、病気休暇制度等があればそれに従う必要があります。
 
 なお、保健所からの就業制限指示までではなく「自宅待機にした方が良い」という程度の指導・要請のレベルだと、最終的には企業の判断で自宅待機させるかを判断することになります。
 新型コロナウイルスの症状があって就業不能ならば無給でも問題ないですが、そうでなければ休業補償(給与の6割)を保証した方が無難なケースが多いでしょう

 

社内での感染予防も重要です!

 最後に、社内でできる予防についてお話しします。
 
 新型コロナウイルスは、石けんによる手洗いの徹底が重要です。
 特に食事前帰室後1〜2時間などルーティンに行うのもよいです。
 手洗いができない場合はアルコール消毒、それも無理ならウエットティッシュなども使いましょう
 
 品薄状態のマスクですが、予防効果はそれほど高くないと言われていますが、混み合った空間では感染予防にはなるようです
 何より、十分な睡眠とバランスの良い食事で自己免疫力を高めることはとても重要です
 
 この辺り、従業員の方への周知を徹底したいところです。
 
 また、換気、手すり・ドアノブ等不特定者が触れる部位のアルコール消毒を徹底したり、入り口にアルコール消毒液を設置するなど社内での感染予防をできるとよいですね。
 
弁護士 戸田  哲
弁護士 竹口 英伸

 

<参考>

感染者発生時の会社の対応(NTTdataの例)

https://www.nttdata.com/jp/ja/news/information/2020/021400/

https://www.city.minato.tokyo.jp/hokenyobou/oshirase.html

 

帰国者・接触者相談センター【厚生労働省HP】

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19-kikokusyasessyokusya.html

 

新型コロナウイルスについて【厚生労働省HP】

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

 

新型コロナウイルスに関するQ & A(企業の方向け)【厚生労働省HP】

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html

 

新型コロナウイルス感染症対策本部【首相官邸HP】

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/taisaku_honbu.html

 
 
 
 
 

派遣労働者も派遣先正社員と同じに扱え!(派遣法同一労働同一賃金ガイドラインたたき台)

2018-09-15

労働弁護士の戸田です。(船橋市・弁護士法人戸田労務経営)

 

今日もまたも同一労働同一賃金についてです。

今回は派遣労働者について。インパクト大なお話です。

9月10日、厚生労働省から派遣労働者についての同一労働同一賃金ガイドラインたたき台も出されましたね。

https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000351609.pdf

 

いよいよ派遣労働者も派遣先の社員さんと完全に同じ待遇をしないとダメな時代が到来?

派遣はウォーターサーバー禁止!ってなせこいことはできんことになる?)

 

数年前、派遣労働者の同一労働同一賃金ガイドライン案が出たときは、

「こんなんホントに実現すんのか」

という冷ややかな目も結構あったと思うのですが、いよいよです。

 

今回の派遣法改正、これ結構衝撃的なんですよ。

 

でも、なぜかあんまり報道されてないですよね。。。

派遣労働者と派遣先企業の正社員の待遇を一緒にしろ!(同一労働同一賃金!)

ってかなりのインパクトだと思うのですが。。。

今までの発想ではありえなかったことですよね。

 

さて、改正派遣法について、少し説明しておきます。

実は、この同一労働同一賃金ルールには例外(抜け穴?)もありますので、注意が必要です。

 

改正労働者派遣法30条の3第1項(原則:派遣先均等・均衡方式)

改正労働者派遣法は、派遣先正社員と派遣社員との待遇を均等・均衡にする必要があると定めました。

さっきのガイドラインたたき台で、いろんな待遇について細かく「同一にしなさい」と言っているのはこの原則ルール。

派遣さんの同一労働同一賃金です。

 

で、その前提として、派遣先の情報提供義務があります。これがミソ。

つまり、

派遣元は派遣先に派遣先正社員の賃金等を含めた情報を教えてもらわないといけない! 

教えてもらえないと派遣契約を結べない!

 

これ、派遣先企業の立場からしてみれば、派遣元会社に自社の社員の待遇を教えないとダメなわけで、

結構抵抗のあるルールだと思います。

何も知らない派遣先企業は「何言ってんだ、そんなもん教えるか!」と断りそうな気がする。

 

改正労働者派遣法30条の4(例外)労使協定方式

ということで、実は例外のルールがあるんです。

 

それがこの労使協定方式。

つまり、派遣元企業は、以下の労使協定を結んで、実際に遵守・実施すればよい。

それで派遣先との均等・均等待遇のルール(原則)は適用されない。ということです。

 

(労使協定の内容)

①賃金額が同種業務の一般労働者の平均的な賃金額以上であること

②法定の教育訓練を実施し、職務内容・成果・能力等を公正に評価し、賃金を改善させること

③賃金以外の待遇について派遣元事業主の通常の労働者と不合理な待遇格差を設けていないこと

 

要は、「派遣元企業の方で、しっかりと派遣社員についての同一労働同一賃金を守る」という労使協定です。

 

情報提供義務が結構なネックになることが予想されますので、大半の派遣会社は、この労使協定方式を採用しないと業務が成り立たないのではないのでしょうか。

「うちは労使協定をしっかり守っていますので、御社(派遣先企業)にはご迷惑おかけしません」みたいな。

 

今後、派遣元企業も派遣先企業どちらも、このルールを前提に対応が必須ですね。

 

全国労働基準関係団体(全基連)の応用研修@名古屋!

2018-02-15

労働弁護士の戸田です。

 

2月3日の節分、名古屋出張に行きました。

これは、全基連(全国労働基準関係団体連合会)主催の応用研修です。

労働審判員(またはその候補者)、社会保険労務士の先生等を対象とした、個別労働紛争の解決を目指した研修です。

最近の労働法制の動き・最新判例・事例検討・模擬労働審判を丸2日間かけて行う研修です。

模擬労働審判は、労働者側・使用者側・労働審判員会側の3チームに分かれて、がっつりやります。

実際の労働審判とはちょっと違いますが・・・なかなか新鮮です。

 

弁護士の参加は多くないのですが、労働審判員やその候補者の方とお話しできる機会は滅多にありません。

ですので私は、私の師匠である菅野和夫教授が登壇する回を狙ってここ数年間毎年参加してきました。

いつも東京会場での参加です。

 

しかし・・・昨年は菅野和夫教授の回が、娘の誕生日と重なるという悲劇?が起きたため、参加を断念・・・

そこでスケジュールを確認したところ、土田道夫教授が登壇する回が名古屋で!

 

私は菅野門下生ですが、宣伝します。

土田道夫教授著の「労働契約法(第2版)」、これ素晴らしいですよ。

論理一環、そして実務でもそのまま使える既述が満載なのです。

特に懲戒解雇などの法理は非常にわかりやすく、実例も豊富。

私も労働審判や訴訟で引用しまくっています。

(サインもらいました)

 

これは名古屋に行くしかない!ということで、行って参りました。

 

流石,土田教授ですね。切れ味鋭い。

今の政府が掲げている「同一労働同一賃金」なんて詐欺だ、とか。

最高裁で講演をした際、日本中の裁判官が一番迷っているテーマが労働契約法20条で、何が不合理な差別になるのか?とか。

非常に面白かったですね。

 

あと、東海地方の労働審判員の方とお話しもできました。

やっぱり選任の仕方などは関東と違うところはありそうですね。

【コラム】働き方改革(テレワーク)について

2017-09-26

労働弁護士の戸田です。

11月に千葉県社会保険労務士会千葉支部での研修講師を担当します関係で、「働き方改革」について改めて勉強中です。

 

今回は在宅勤務、テレワークについて。

待機児童が減らないこの時代、テレワークは魅力的。

うちの事務所でも導入しようかな・・・なんて。

 

とはいえ、この制度の導入は簡単じゃないですよね。

よく言われるとおり、

①労働時間をどうやって把握すんのか

②企業秘密の漏洩をどうやって防ぐのか

③長時間労働を防ぐ方策は?

などなど、検討課題は多い。導入企業もまだまだ一部の大企業ばっかりですよね。

 

まず、①の労働時間の把握・労働時間管理の問題です。

事業外みなし労働の制度もありとは言われますが、事業外みなしの適用の要件は結構厳しい。

「労働時間の把握が困難」である必要をきっちり満たすことができるかどうかが鍵です。

しかし、今の時代、パソコンや携帯電話で労働時間管理ができますので、この要件の適用が争われるケースも出て来そうで、在宅勤務制度の導入のために事業外みなし制度を使うのは、ちょっとリスクがある気もします。

メール・クラウドや報告書を使った都度報告、これで地道に労働時間管理するのが無難ですし、基本ですかね。

 

中抜けしてないか、サボっているかどうかについては、提出された成果物で見るってことになるか。

具体的な指示とその履行をちゃんと見ないとダメですね。

定期的な出勤を義務付けることも必要ですが、結局労働者への信頼が大前提ですね。

 

②の企業秘密の漏洩リスクの観点はどうでしょう。

実戦している企業も大体そうですが、当然重要な書類の持ち帰りはダメ。

さらに言えば、クラウド上でのアクセス等はどこまで認めるか。線引きが難しい。

・・・とするとうちの法律事務所では何をやってもらおう?依頼者関係に関わる資料作成なんかは全てダメになるとすれば、在宅勤務でやってもらう仕事を特定するのも難しいところ。

 

なにより、問題は③の長時間労働の問題です。

元々、「望まない在宅勤務」ってのは結構ざらにあった問題です。

勤務時間内には仕事が終わらず、資料を持ち帰ってやらざるをえない。

それが過酷な長時間労働を生み、時には過労死の被害をも生んでしまう。

持ち帰り残業が労働時間になるかどうか、激しく争われる事案は枚挙に暇がありません。

現在も非常に多い労務トラブルの一つです。

 

通常、会社から持ち帰り残業の指示が全くない事案ではこれが労働時間と評価されるのは限定的です。

しかし、在宅勤務を制度として取り入れた場合はどうか。

仕事が多すぎて時間外やらないと終わらない、というケースの場合は、従来の「望まない在宅勤務」とは違って労働時間と評価される場面は多くなると思います。

「自宅だから自由に仕事できるでしょ」的な感覚で導入するのは極めて危険です。①とは逆で、労働者に甘えてはいけない。

 

結局、この制度を導入する前提としては、社内での適正な労務管理がしっかりできているのは大前提。

労働者への信頼ももちろんですが、労働者に甘えない厳格な管理と制度設計が必要ですね。

 

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