Archive for the ‘コラム’ Category
派遣労働者も派遣先正社員と同じに扱え!(派遣法同一労働同一賃金ガイドラインたたき台)
労働弁護士の戸田です。(船橋市・弁護士法人戸田労務経営)
今日もまたも同一労働同一賃金についてです。
今回は派遣労働者について。インパクト大なお話です。
9月10日、厚生労働省から派遣労働者についての同一労働同一賃金ガイドラインたたき台も出されましたね。
https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000351609.pdf
いよいよ派遣労働者も派遣先の社員さんと完全に同じ待遇をしないとダメな時代が到来?
(派遣はウォーターサーバー禁止!ってなせこいことはできんことになる?)
数年前、派遣労働者の同一労働同一賃金ガイドライン案が出たときは、
「こんなんホントに実現すんのか」
という冷ややかな目も結構あったと思うのですが、いよいよです。
今回の派遣法改正、これ結構衝撃的なんですよ。
でも、なぜかあんまり報道されてないですよね。。。
派遣労働者と派遣先企業の正社員の待遇を一緒にしろ!(同一労働同一賃金!)
ってかなりのインパクトだと思うのですが。。。
今までの発想ではありえなかったことですよね。
さて、改正派遣法について、少し説明しておきます。
実は、この同一労働同一賃金ルールには例外(抜け穴?)もありますので、注意が必要です。
改正労働者派遣法30条の3第1項(原則:派遣先均等・均衡方式)
改正労働者派遣法は、派遣先正社員と派遣社員との待遇を均等・均衡にする必要があると定めました。
さっきのガイドラインたたき台で、いろんな待遇について細かく「同一にしなさい」と言っているのはこの原則ルール。
派遣さんの同一労働同一賃金です。
で、その前提として、派遣先の情報提供義務があります。これがミソ。
つまり、
派遣元は派遣先に派遣先正社員の賃金等を含めた情報を教えてもらわないといけない!
教えてもらえないと派遣契約を結べない!
これ、派遣先企業の立場からしてみれば、派遣元会社に自社の社員の待遇を教えないとダメなわけで、
結構抵抗のあるルールだと思います。
何も知らない派遣先企業は「何言ってんだ、そんなもん教えるか!」と断りそうな気がする。
改正労働者派遣法30条の4(例外)労使協定方式
ということで、実は例外のルールがあるんです。
それがこの労使協定方式。
つまり、派遣元企業は、以下の労使協定を結んで、実際に遵守・実施すればよい。
それで派遣先との均等・均等待遇のルール(原則)は適用されない。ということです。
(労使協定の内容)
①賃金額が同種業務の一般労働者の平均的な賃金額以上であること
②法定の教育訓練を実施し、職務内容・成果・能力等を公正に評価し、賃金を改善させること
③賃金以外の待遇について派遣元事業主の通常の労働者と不合理な待遇格差を設けていないこと
要は、「派遣元企業の方で、しっかりと派遣社員についての同一労働同一賃金を守る」という労使協定です。
情報提供義務が結構なネックになることが予想されますので、大半の派遣会社は、この労使協定方式を採用しないと業務が成り立たないのではないのでしょうか。
「うちは労使協定をしっかり守っていますので、御社(派遣先企業)にはご迷惑おかけしません」みたいな。
今後、派遣元企業も派遣先企業どちらも、このルールを前提に対応が必須ですね。
全国労働基準関係団体(全基連)の応用研修@名古屋!
労働弁護士の戸田です。
2月3日の節分、名古屋出張に行きました。
これは、全基連(全国労働基準関係団体連合会)主催の応用研修です。
労働審判員(またはその候補者)、社会保険労務士の先生等を対象とした、個別労働紛争の解決を目指した研修です。
最近の労働法制の動き・最新判例・事例検討・模擬労働審判を丸2日間かけて行う研修です。
模擬労働審判は、労働者側・使用者側・労働審判員会側の3チームに分かれて、がっつりやります。
実際の労働審判とはちょっと違いますが・・・なかなか新鮮です。
弁護士の参加は多くないのですが、労働審判員やその候補者の方とお話しできる機会は滅多にありません。
ですので私は、私の師匠である菅野和夫教授が登壇する回を狙ってここ数年間毎年参加してきました。
いつも東京会場での参加です。
しかし・・・昨年は菅野和夫教授の回が、娘の誕生日と重なるという悲劇?が起きたため、参加を断念・・・
そこでスケジュールを確認したところ、土田道夫教授が登壇する回が名古屋で!
私は菅野門下生ですが、宣伝します。
土田道夫教授著の「労働契約法(第2版)」、これ素晴らしいですよ。
論理一環、そして実務でもそのまま使える既述が満載なのです。
特に懲戒解雇などの法理は非常にわかりやすく、実例も豊富。
私も労働審判や訴訟で引用しまくっています。
(サインもらいました)
これは名古屋に行くしかない!ということで、行って参りました。
流石,土田教授ですね。切れ味鋭い。
今の政府が掲げている「同一労働同一賃金」なんて詐欺だ、とか。
最高裁で講演をした際、日本中の裁判官が一番迷っているテーマが労働契約法20条で、何が不合理な差別になるのか?とか。
非常に面白かったですね。
あと、東海地方の労働審判員の方とお話しもできました。
やっぱり選任の仕方などは関東と違うところはありそうですね。
【コラム】働き方改革(テレワーク)について
労働弁護士の戸田です。
11月に千葉県社会保険労務士会千葉支部での研修講師を担当します関係で、「働き方改革」について改めて勉強中です。
今回は在宅勤務、テレワークについて。
待機児童が減らないこの時代、テレワークは魅力的。
うちの事務所でも導入しようかな・・・なんて。
とはいえ、この制度の導入は簡単じゃないですよね。
よく言われるとおり、
①労働時間をどうやって把握すんのか、
②企業秘密の漏洩をどうやって防ぐのか、
③長時間労働を防ぐ方策は?
などなど、検討課題は多い。導入企業もまだまだ一部の大企業ばっかりですよね。
まず、①の労働時間の把握・労働時間管理の問題です。
事業外みなし労働の制度もありとは言われますが、事業外みなしの適用の要件は結構厳しい。
「労働時間の把握が困難」である必要をきっちり満たすことができるかどうかが鍵です。
しかし、今の時代、パソコンや携帯電話で労働時間管理ができますので、この要件の適用が争われるケースも出て来そうで、在宅勤務制度の導入のために事業外みなし制度を使うのは、ちょっとリスクがある気もします。
メール・クラウドや報告書を使った都度報告、これで地道に労働時間管理するのが無難ですし、基本ですかね。
中抜けしてないか、サボっているかどうかについては、提出された成果物で見るってことになるか。
具体的な指示とその履行をちゃんと見ないとダメですね。
定期的な出勤を義務付けることも必要ですが、結局労働者への信頼が大前提ですね。
②の企業秘密の漏洩リスクの観点はどうでしょう。
実戦している企業も大体そうですが、当然重要な書類の持ち帰りはダメ。
さらに言えば、クラウド上でのアクセス等はどこまで認めるか。線引きが難しい。
・・・とするとうちの法律事務所では何をやってもらおう?依頼者関係に関わる資料作成なんかは全てダメになるとすれば、在宅勤務でやってもらう仕事を特定するのも難しいところ。
なにより、問題は③の長時間労働の問題です。
元々、「望まない在宅勤務」ってのは結構ざらにあった問題です。
勤務時間内には仕事が終わらず、資料を持ち帰ってやらざるをえない。
それが過酷な長時間労働を生み、時には過労死の被害をも生んでしまう。
持ち帰り残業が労働時間になるかどうか、激しく争われる事案は枚挙に暇がありません。
現在も非常に多い労務トラブルの一つです。
通常、会社から持ち帰り残業の指示が全くない事案ではこれが労働時間と評価されるのは限定的です。
しかし、在宅勤務を制度として取り入れた場合はどうか。
仕事が多すぎて時間外やらないと終わらない、というケースの場合は、従来の「望まない在宅勤務」とは違って労働時間と評価される場面は多くなると思います。
「自宅だから自由に仕事できるでしょ」的な感覚で導入するのは極めて危険です。①とは逆で、労働者に甘えてはいけない。
結局、この制度を導入する前提としては、社内での適正な労務管理がしっかりできているのは大前提。
労働者への信頼ももちろんですが、労働者に甘えない厳格な管理と制度設計が必要ですね。
【コラム】労働弁護士とiPad
労働弁護士の戸田です。
今日はあまり労働問題と関係ない話です。
労基署の特別部隊の「かとく」が、IT専門の職員を多数入れているとの話を聞いてかどうか、私もiPadを導入しました。(おそらく新しいもの欲しさです)
新しい物見たさに、昔初代iPadを使っていたことがあったのですが、重い(1㎏近い)、入力に使えない(Word不対応)ということで御蔵入り。
しばらくはちょっと分厚いノートパソコンを愛用していました。
ですが、最近のiPadは違いますね。
キーボード付けたらノートPCと大して変わりません。
・・・と言ってる側から、若干タブレット端末の限界か、記事の途中で何度か画面が切り替わってしまい、書き直しを強いられているので、褒めまくりはやめます。
ただ、労働問題の相談にも重宝しているのは事実です。
会社概要をその場で確認させて頂いたり、労働法令や労働関係の通達を確認することも簡単です。
IT も労働弁護士にとったはマスト!
と思って使いこなそうと思います。
【コラム】有期雇用契約の無期転換に向けた企業対応と労働者の悩み
労働弁護士の戸田哲です。
来年平成30年4月1日で、労働契約法18条の公布日の起算から5年を迎えます。
いわゆる有期雇用契約の5年間での無期転換ルールです。
有期雇用契約が無期に変わる、しかも無期転換の「権利」が労働者に与えられる。
とても大きな効果を持つ規定です。
これが本格的に発生するのが来年の春、ということで、この手の相談はとても多いです。
使用者側、会社側の相談は、この無期転換に対応するにはどうすればよいのか?
無期転換した場合の制度はどのように設計すればよいか、というものです。
反面、労働者の方からよく相談があるのは、平成30年3月末(またはそれ以前)で雇止め。
平成30年4月まで有期雇用契約を更新すると無期転換権が付与されてしまうので、その前に契約を切る、というやり方です。
これ、単純に雇止めが許されるわけではなくて、労働契約法19条の適用の可能性があります。
主幹業務を長年任され続けていた有期雇用の労働者の方であれば、「有期労働契約が更新されることについて合理的な理由」を持つことはあり得ますからね。
この期待をブロックするため、企業側が手を打っている一つの方法が更新上限の規定です。
更新の際、「次の更新が最後」と契約書に謳っておく、そして、更新が終わりに近づいていることを契約のたびに確認する、という方法です。
確かに更新の「期待」が無くなってしまう可能性は高くなります。
無期雇用労働者が増えて困ると考える企業は、この手で雇止めの策をとるわけです。
平成30年3月までの更新がラスト、という契約書の多いこと・・・
本来、「非正規労働者の安定」と導入したはずの制度が、かえって非正規労働者の生活の糧を奪う結果に。
何とも皮肉な現実です。
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