【執筆】代表弁護士の戸田が輸送経済新聞でのコラムを掲載(第10回:従業員の退職トラブル②問題社員) | 弁護士による企業のための労務問題相談

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【執筆】代表弁護士の戸田が輸送経済新聞でのコラムを掲載(第10回:従業員の退職トラブル②問題社員)

弁護士法人戸田労務経営です。

代表弁護士の戸田が物流・輸送業界の専門誌である輸送経済新聞社で運送業での労務問題についてのコラムの連載についての紹介です。

運輸・物流業界の労務・法律問題に精通した企業側労務専門の弁護士として紹介されております。

輸送経済新聞4月12日号掲載の第10回は従業員の退職トラブルについて取り上げました。

記事内容をご紹介します。

※紙面はこちら※

従業員の退職トラブル②問題社員

引き続き、労使トラブルで最も多い、労使の「別れ(=退職)」について掲載する。前回は、突然の別れがテーマだったが、今回は、逆に会社の方が愛想を尽かし、「辞めてほしい」と別れを告げる場面を取り上げる。

いわゆる、問題社員への対応の問題だが、非常に難しい問題で、指折りの労務相談だ。特に、「有無を言わさぬ一方的な別れ=解雇」事案は、労使紛争のリスクが極めて高い。

会社側は自由に解雇できず

よくあるのは、こんな事例だ。ある運送会社では、普段から勤務態度が悪くて現場でもトラブルばかり、配車に対しても文句を言い続けるドライバーに頭を悩ませていた。ある時、そのドライバーが居眠り運転をして大きな自損事故を起こした。幸いにも大きなけががなかったこともあり、会社としては、「辞めさせるチャンス」と解雇処分をした。

だが、その後突然、弁護士から「解雇は無効であり、復職を求める。復職までの賃金は全額支払うように」という内容証明郵便が届き、裁判所での労働審判の結果、最終的に高額の解決金を支払うことになってしまった。

会社からすれば、積もり積もった積年の問題があり、我慢に我慢を重ねてきていた。「なぜ解雇が認められないのか」との不満の声はよく耳にする。残念ながら、会社から告げる「別れ」は、法律による縛りがある。

これは、日本の雇用慣行の問題につながる。日本は高度成長期以降、終身雇用の考え方をベースとしてきた。時代が変わった今でも、そうした終身雇用的な発想の根本は変わっていない。

そのため、特に正社員の雇用を途中で打ち切る解雇というのは、よほどのことがない限り認められない。解雇に相当するほどの重大な事情があり、かつ、解雇が避けられないほどの事情がなければ解雇無効となってしまう(労働契約法16条)。労働者が自由に別れを告げてよい、という話とは全く対照的だ。

無効時は重い負担やリスク

解雇無効となればどうなるか。文字通り解雇はなかったことになるので、労働者を復職させなければならない。一度別れを告げた相手とやり直すのは、なかなか難儀なことだ。

それだけではない。不当解雇の時点から復職させるまでの期間は、働いていない状態でも給与を支払わないといけないのだ(バックペイの支払い)。

労働者側が、復帰を望まない事案も多いが、その場合は職を失うことに対する解決金を払うのが通常だ。これは、バックペイを参考にしつつ決められるが、場合によっては労働者の給与1年分以上になることもある=表。

また、弁護士対応や団体交渉対応、裁判所に出頭する会社担当者の時間的ロスも実際上は大きなコストだ。

さらに、今問題となっているのが、会社の名誉や信用の低下のリスク(レピュテーションリスク)だ。近年では、SNSなどで簡単に情報が発信され、会社の労使トラブルに関するマイナス情報も簡単に広まってしまう。労使トラブルによる会社の名誉・信用の低下するリスクは非常に身近になっている。

 

有効か否かはプロセス次第

安易な解雇は非常に危ない。もちろん目に余る事案であれば解雇が有効と認められるが、裁判所は解雇までの「プロセス」がしっかりしているかを重視する。私が見る限り、このプロセスを踏めているケースはとても少ない。

愛想を尽かして「別れたい」のに、別れさせてくれないというのは会社だけではなく、労働者にとっても不幸なことだ。 別れは一方的ではなく、説明して双方納得のもとできれいに別れたい。これはまた次回。

 

表:解雇により会社の三大リスク

復職リスクと多大な金銭コスト 解雇した労働者を復職させつつ、復職までの賃金を払わないといけない
紛争対応のための人的コスト 労使紛争に対応する企業担当者の時間ロス
会社の名誉・信用が低下するリスク 最近はSNSなどの情報発信が顕著

 

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