弁護士法人戸田労務経営です。
新型コロナウイルスの拡大が止まらず、心配な日々が続きますね。
さて、当事務所の竹口英伸弁護士は、医師免許を持ち、現役産業医としても活躍をしていますので、新型コロナウイルスの感染についても日々対応をしております。
そこで、今回の新型コロナウイルスへの対応について、竹口弁護士による医療の観点を含め、所長弁護士の戸田が労務対応をまとめました。
新型コロナウイルスの現状
報道のとおり、新型コロナウイルスは感染経路が追跡不可能な患者が出現し、感染力はインフルエンザと同等程度という報告もありますが、ここははっきりしていません。
この新型コロナウイルス、潜伏期間は1〜12.5日(多くは5、6日)ですが、無症状(潜伏期間中)の患者から感染したとする報告もあります。日に日に感染者が増えている現状です。
新型コロナウイルスの致死率は約2%程度で、インフルエンザ(約0.1%)より高く、SARS(約10%)よりは低いイメージですが、予断を許さない状況です。
現在、一般医療機関では診断の検査はできません。
地方衛生研究所、国立感染症研究所、受託民間会社でのみPCR検査で診断できますが、検査件数の制限のため、PCR検査は渡航歴や接触歴等の一定の要件をみたした場合に限り行われる取り扱いです。
感染が疑われる従業員に対する措置
さて、新型コロナウイルスに感染したと疑われる従業員がいる場合、企業はどのように対応するべきでしょうか。
① 保健所への連絡
まず、その従業員から「帰国者・接触者相談センター」(保健所内。連絡先は下記<参考>)に連絡させる必要があります。
その後、保健所から具体的な指示がある場合はそれに従って下さい。
② 自宅待機命令(給与を支払うべきか?)
保健所から具体的な指示がなくても、安全確保・危機管理の観点から会社判断で自宅待機を命ずることはできます。
潜伏期間に照らせば14日間程度が妥当でしょう。新型コロナウイルスが疑われるような症状(発熱や咳など)があって就労が不能の状態であれば、通常の病気欠勤と同じくノーワークノーペイとなります。無給でも問題ありません。
これに対して、症状のない従業員に自宅待機を命じる場合には休業手当(労基法26条。平均賃金の60%)の支払いが必要となります。
在宅勤務を命じる場合は正規の賃金の支払が必要となります。
感染者が発生した場合
次に、従業員が新型コロナウイルスに感染していることが判明した場合の具体的な対応についてです。
① 保健所からの連絡
従業員が新型コロナウイルスに感染していることについて、保健所からの連絡によって判明することがあります。
新型コロナウイルス感染患者を診断した医師は、直ちに保健所に届出をします。
この時、確定診断例だけではなく、擬似症患者(渡航歴・濃厚接触歴、症状等から判断)も届出の対象となっています。
医師からの届出を受けた保健所は、情報収集のために関係者に対して質問・調査するができるため(積極的疫学調査:感染症法15条)、会社にはこの段階で保健所から連絡が入ることになるのです。
ですので、保健所から連絡が入った場合は、可能な限り調査に協力して対応を相談してください。
② 従業員本人からの申し出によって感染が判明した場合
保健所から連絡が入る前に、本人からの連絡等で感染者発生が判明することもあります。
そうした場合も、会社は速かに保健所に連絡して指示を受け、対応を相談してください。
③ 知事からの強制入院・就業制限指示がされた場合の企業の労務対応は?
都道府県知事は、感染者を強制入院させることができます(感染症法19条)。この場合の入院費は公費負担です。
また、都道府県知事から、就業制限の指示がされることもあります(同18条)。
こうした場合、原則として賃金を払う必要はありません。もはや「使用者の責に帰すべき事由による休業」(労基法26条)にあたらないので、ここもノーワークノーペイになるからです。
ただし、病気休暇制度等があればそれに従う必要があります。
なお、保健所からの就業制限指示までではなく「自宅待機にした方が良い」という程度の指導・要請のレベルだと、最終的には企業の判断で自宅待機させるかを判断することになります。
新型コロナウイルスの症状があって就業不能ならば無給でも問題ないですが、そうでなければ休業補償(給与の6割)を保証した方が無難なケースが多いでしょう。
社内での感染予防も重要です!
最後に、社内でできる予防についてお話しします。
新型コロナウイルスは、石けんによる手洗いの徹底が重要です。
特に食事前や帰室後。1〜2時間毎などルーティンに行うのもよいです。
手洗いができない場合はアルコール消毒、それも無理ならウエットティッシュなども使いましょう。
品薄状態のマスクですが、予防効果はそれほど高くないと言われていますが、混み合った空間では感染予防にはなるようです。
何より、十分な睡眠とバランスの良い食事で自己免疫力を高めることはとても重要です。
この辺り、従業員の方への周知を徹底したいところです。
また、換気、手すり・ドアノブ等不特定者が触れる部位のアルコール消毒を徹底したり、入り口にアルコール消毒液を設置するなど社内での感染予防をできるとよいですね。
弁護士 戸田 哲
弁護士 竹口 英伸
<参考>
感染者発生時の会社の対応(NTTdataの例)
https://www.nttdata.com/jp/ja/news/information/2020/021400/
https://www.city.minato.tokyo.jp/hokenyobou/oshirase.html
帰国者・接触者相談センター【厚生労働省HP】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19-kikokusyasessyokusya.html
新型コロナウイルスについて【厚生労働省HP】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
新型コロナウイルスに関するQ & A(企業の方向け)【厚生労働省HP】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html
新型コロナウイルス感染症対策本部【首相官邸HP】
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/taisaku_honbu.html