2024年09月20日
社会福祉法人A事件高裁判決の意義(東京高裁令和6年7月4日)~不活動時間管理の実務に活きる賃金設定の基準とは
私が代理人を務める社会福祉法人A事件(千葉地裁令和5年6月9日判決)について、控訴審判決が出されました(東京高裁令和6年7月4日判決)。この事件は、夜勤時間帯の不活動時間(いわゆる待機時間)について未払残業代が請求された事件です。事案内容・地裁判決の詳細はこちら地裁判決では、夜勤時間帯の未払賃金の計算は、6000円の夜勤手当を基礎として、1時間の賃金単価は750円となるとした上、この賃金単価が最低...
2024年05月21日
新しい働き方と人事異動の在り方を考える~滋賀県社会福祉協議会事件(最高裁令和6年4月26日第二小法廷判決)
先日、令和6年4月26日に最高裁判決第二小法廷判決が配置転換命令に関する判決を出しました(滋賀県社会福祉協議会事件判決)。配置転換とは、労働者の職務内容や勤務場所を相当の長期間に渡って変更することと定義されています(菅野和夫「労働法」第13版681頁以下)。昭和からの長期雇用システムの中では、「企業組織内での従業員の職業能力開発・地位の発展や労働力の補充・調整のため」に、人事権の一内容として、使用...
2024年04月24日
協同組合グローブ事件(最高裁令和6年4月16日第三小法廷判決)は企業の事業場外みなし労働時間制の道を開くか?
令和6年4月16日に、事業場外みなし労働時間制に関する最高裁判決(協同組合グローブ事件)が出ました。事業場外みなし労働時間制というのは、労働者が労働時間の全部又は一部について、事業場施設の外で業務に従事した場合において、労働時間を算定しがたいときに、その日は所定労働時間だけ労働したとみなす制度です(労働基準法38条の2)。たとえば、所定労働時間8時間の労働者が、実際には事業場の外で所定労働時間を超...
2023年12月11日
夜勤等の不活動時間の賃金制度の在り方を考える(残業代単価を日中とは異なる単価で計算した千葉地裁令和5年6月9日判決)
今回は、夜勤等の不活動時間についての賃金制度がどうあるべきかを考えます。最近私が法人側を担当した事件で、夜勤の不活動時間(夜勤時間帯)の賃金の考え方について、少し面白い判断をしたものがあります。この判決では、夜勤時間の労働時間について、その残業代計算の基礎単価について夜勤手当を基準として算定するべきとされました。これは最低賃金を下回る水準なのですが、それも違法とはならないとの判断です(千葉地裁令和...
2023年09月28日
適格性判断のための有期雇用契約は試用期間(実質無期雇用)となるか?
(明治安田生命保険事件・東京地裁令和5年2月8日判決)労働者を新規採用する際、その適性を見るために、無期ではなく一定期間の有期雇用契約を締結することがあります。適性判断のためには試用期間を設けることが多いのですが、試用期間は無期契約が前提です。ただ、試用期間中に「適性が無い」と判断して本採用拒否をしようとしても、これは解雇と同じ法規制が適用され、簡単には行えません。※参考 「試用期間の労働者の対応...
2023年07月27日
名古屋自動車学校事件最高裁判決(令和5年7月20日最高裁判決)が高齢者の雇用に与える影響
先日、令和5年7月20日に名古屋自動車学校事件最高裁判決が出されました。この事件は、定年退職後の再雇用の際に、基本給や賞与が大きく引き下げられた従業員が、その待遇が現役正社員と比較して不合理な差別だ、と主張して訴えた事件です。いわゆる同一労働同一賃金の問題です。同一労働同一賃金については、2019年12月には厚労省から同一労働同一賃金のガイドラインが確定し、パートタイム・有期雇用労働法の改正も20...
2023年03月26日
最高裁令和5年3月10日判決(運送会社の固定残業代)の速報
先日2023年3月10日に、運送業界において注目の最高裁判決が出された。※詳細な解説は後載します。問題となったのは、残業代の支払い方だ。運送会社では比較的よく見られるような考え方と手法によった賃金制度とも言えるが、最高裁はその支払い方を違法として、会社敗訴の判断を出した。そのため、この判決の影響はそれなりに大きくなることが予想される。最初にこの事件での会社の賃金の体系を説明する。非常に複雑なので、...
2020年10月18日
【弁護士解説】東京メトロコマース事件最高裁判決の労務実務への影響【同一労働同一賃金】
弁護士法人戸田労務経営の所長弁護士の戸田です。大阪医科大学(大阪医科薬科大学)事件・東京メトロコマース事件最高裁判決が先日10月13日に出されました。同一労働同一賃金については、2018年にハマキョウレックス・長澤運輸事件最高裁判決が出され、世間の注目を集めました。そして、2019年12月には厚労省から同一労働同一賃金のガイドラインが確定し、パート・有期労働法の改正も今年2020年4月1日から施行...
2020年10月16日
大阪医科大学(大阪医科薬科大学)事件最高裁判決の労務実務への影響【同一労働同一賃金】
弁護士法人戸田労務経営の代表弁護士の戸田です。大阪医科大学(大阪医科薬科大学)事件・東京メトロコマース事件最高裁判決が先日10月13日に出されました。同一労働同一賃金については、2018年にハマキョウレックス・長澤運輸事件最高裁判決が出され、世間の注目を集めました。そして、2019年12月には厚労省から同一労働同一賃金のガイドラインが確定し、パート・有期労働法の改正も今年2020年4月1日から施行...
2020年10月14日
大阪医科大(大阪医科薬科大)事件最高裁判決、メトロコマース事件最高裁判決【同一労働同一賃金】
弁護士法人戸田労務経営の所長の戸田です。10月13日、注目の最高裁判決が出ました。大阪医科大(大阪医科薬科大)事件最高裁判決、メトロコマース事件最高裁判決の2件です。いずれも、昨今話題になっている同一労働同一賃金を主たる争点として長きにわたって争われてきた事件です。この2件が特に注目されていたのは、これまで最高裁では判断がされていなかった、「賞与」「退職金」について判断がされるためです。同一労働同...