相談内容
我が社では成績が悪く勤務態度も悪い従業員について解雇を検討しています。
ですが、解雇が可能な場合はかなり限られると聞きました。
どういうケースであれば解雇が可能になるのかを教えてください。
POINT
解雇が認められるためには、法律上相当厳しい要件をクリアする必要があります。
そう簡単に解雇は可能になりません。
労務の専門弁護士に相談しつつ進めることをお勧めします。
相談が特に多い業種(産業別)
☑建設業 ☑製造業 ☑情報通信業 ☑運輸・郵便業(トラック運送業)
☑卸売・小売業 ☑金融業・保険業 ☑不動産・物品賃貸業
☑宿泊・飲食業(ホテル・飲食店等) ☑教育・学習支援(塾・予備校等)
☑医療・介護福祉業 ☑サービス業
※解雇に関する相談が業種を問わず多くの相談があります。
1 普通解雇が可能な場合
労働契約法第16条は、使用者は、客観的合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、労働者を解雇することができないと、解雇権濫用法理を定めています。
いわゆる不当解雇として無効になってしまいます。
それでは、どんな場合であれば解雇が可能になるのでしょうか。
以下、類型ごとに見てみましょう。
⑴ 傷病・健康状態の悪化による労働能力の低下
「身体・精神の障害により業務に耐えられないとき」と、就業規則で規定することが多いです。
ただし、傷病などの程度が非常に重く、労働を行うことが到底できない程度に至っていることが必要と言われますので、簡単には解雇できません。
そのため、多くの企業では、この解雇の前提として休職制度を採用しており、この休職を経た上での解雇又は自然退職を検討します。
休職期間が満了しても私傷病が「治癒」しない場合に初めて解雇が可能になります。
⑵ 能力不足・成績不良・適格性の欠如
文字通り、会社での仕事をする能力や適格がない、という理由の解雇です。
「労働能率が劣り、向上の見込みがないこと」等と就業規則で規定されます。
この場合についても、簡単に解雇が認められるわけではありません。
解雇が可能になるためには、能力不足・成績不良・適格性欠如の事実が、客観的な資料を基に十分な裏付けが必要です。
さらに、相当の指導・注意によって改善を促している点の資料も必要です。
⑶ 職務懈怠・勤怠不良
無断欠勤、遅刻・早退過多、勤務態度や状況の不良、協調性が欠けること等が理由となる解雇です。
ここも、解雇が可能になるためには、無断欠勤、遅刻・早退過多、勤務態度や状況の不良、協調性が欠けることについての客観的資料が不可欠です。
また、会社が相当の指導・注意などによって改善を促している資料があるかどうかもポイントです。
⑷ 職場規律違反・不正行為・業務命令違反
たとえば、上司や同僚への暴行・強迫、社内での業務妨害などが入ります。
いわば労働者の非違行為であり、懲戒解雇の理由とも重なる理由ですから、重大な非違行為があった場合は、それだけで解雇理由に直結することもあり得ます。
もっとも、解雇が可能になるには、その事情についての慎重な調査と相応の資料が大前提です。
日常的な業務指示・命令を聞かなかったり、配転や出向の命令に背く等の業務命令違反のケースも問題になりますが、こうした事情によって解雇を可能とするには、業務指示等自体の裏付け、配転や出向等についてはその命令の有効性を裏付ける資料等が必要でしょう。
2 整理解雇における不当解雇
次に、整理解雇の場面です。
整理解雇が認められるためには、次の4要件(または4要素)を満たす必要があるといわれます。
いずれの要件についても相応の証拠資料が必要ですから、解雇が可能になる場面は相当に限られます。
① 人員削減の必要性があるかどうか
いわゆる余剰人員を削る必要があるかどうかです。
ただ、近年の裁判例では、人員削減しなければ企業が倒産する、というところまで切迫した必要性は求めていません。
② 会社が解雇回避努力義務を行ったかどうか
解雇は最後の手段です。会社は、解雇を回避する努力を行う必要があります。
たとえば、解雇をする前に、新規採用の停止、役員報酬カット、昇給停止、賞与の減額・停止、時間外労働の削減、非正規労働者の雇止め、一時帰休、希望退職者募集、配転・出向等の様々な人件費削減措置をとる必要があります。
③ 解雇される人物を選んだことに相当性があるか(被解雇者選定の妥当性)
恣意的に選ぶことは許されません。個人的に気にならない、という理由での選定は不相当です。
勤務成績を考慮することや、解雇による打撃が少ない人物を選ぶ等、合理的な基準が必要です。
④ 労働者・労働組合への説明・協議を十分におこなったか(手続の妥当性)
会社としては、上記①から③の事情はもちろん、整理方針や手続・規模や解雇条件等、様々なことを労働者に説明しなければなりません。
3 懲戒解雇における不当解雇
懲戒解雇の有効性は、普通解雇に比べても、非常に厳しく判断させる傾向にあります。
解雇が可能となるためには、就業規則の懲戒解雇事由に該当するか、該当するとしても、その処分が重すぎないかを慎重に検討する必要があります。
また、従業員の言い分をしっかりと聴取する等懲戒解雇に至る手続が適正か等、クリアしなければならない点が数多くあります。
従業員の懲戒解雇を検討する場合は必ず弁護士に相談することをお勧めします。
→「懲戒処分の進め方」
4 従業員の解雇を検討する際には、弁護士への相談をおすすめします。
以上のとおり解雇が可能になるためのハードルは非常に高いです。
間違った解雇を行うと、従業員から労働 審判や民事訴訟を起こされ、会社として多大なコスト・リスクがかかる可能性があります。
解雇が可能かどうかの判断は、労働実務を踏まえた判断・手続が不可欠ですので、法的な労務管理の専門家の労働弁護士に相談するのが一番です。
もし、会社として解雇を検討しているのであれば、労働弁護士のフォローを随時受けながら、適切な方法で行っていくことが不可欠です。お気軽にご相談ください。
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