少し前になりますが、当社は労働基準監督署から呼び出しを受けたのですが、忙しくて対応しませんでした。
そうしたところ、先日突然連絡もなく労働基準監督署が、「臨検監督」と言って、何も事前連絡せずに立ち入り検査にやってきました。
営業時間中に労働基準監督署に立ち入られてしまうと、業務に大きな支障が出てしまい、非常に迷惑です。拒否したいのですが、問題はないでしょうか。
労働基準監督署からの呼び出しを理由もなく拒否をしていると、臨検などの強制的な手続に切り替えられます。
臨検に対する対応もひどいと、場合によっては送検手続をされることもあり得ます。
労働基準監督署の呼び出しや臨検には誠実に応じるべきです。
何よりも、労働基準監督署が入っても何も問題ないような労務管理体制の構築が重要です。
☑建設業 ☑製造業 ☑情報通信業 ☑運輸・郵便業(トラック運送業)
☑卸売・小売業 □金融業・保険業 □不動産・物品賃貸業
☑宿泊・飲食業(ホテル・飲食店等) □教育・学習支援(塾・予備校等)
□医療・介護福祉業 ☑サービス業
※労働基準監督署の立ち入りが特に多いのは、労働災害の起こりやすい建設業、製造業、運輸・郵便業(トラック運送業)、労働時間についての問題をはらむ運輸・郵便業(トラック運送業)、宿泊・飲食業(ホテル・飲食店等)、卸売・小売業ですが、近時、塾といった教育・学習支援業に対しても監督が行われたことがニュースになっています。
このように、業種を問わず労働基準監督署の臨検が行われています。
労働基準監督署は、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法等の労働基準関係法令が企業に守られているかをチェックし、労働者の労働条件・労働環境を確保・改善する厚生労働省(労働基準局)の第一線の機関です。
労働基準監督署は、会社の事業場を強制的に立ち入り検査(臨検監督)し、法令違反を是正指導します。
近時の臨検監督は、会社に何も事前連絡をせずに行われることが多いです。
臨検監督には次のような種類があります。
①定期監督 | 労働基準監督署が定めた監督計画にもとづき、その年度の行政課題に見合った事業場を選び、定期的な臨検監督を行うものです。 たとえば、「ブラック企業」が問題となった年においては、長時間労働の是正が行政課題として、長時間労働が起きがちな事業場がターゲットとされました。 |
②申告監督 | 労働者等から、「会社が労働基準法等の法律違反があるので調査して是正してほしい」という申告をきっかけに実施される監督です。 労働者との個別のトラブルから労働基準監督署が監督に入る場面はこの申告監督がほとんどです。 |
③災害調査・災害時監督 | 労働災害により事業場で労働者が死傷した場合等に、労働災害の実態、原因、労働安全衛生法違反の有無を確認して緊急対策を行うことです。 |
賃金台帳・就業規則・36協定・タイムカード・勤務記録票・給与明細書等、事業場に備え置いてある帳簿・書類のチェックを受けます。
必要に応じて、社長や現場責任者、労働者から事情を聴取されます。
使用停止命令書は、緊急に改善しないと生命や身体に危険を及ぼすおそれのある物の使用を禁止したり、改善を命令するためのものです。
是正勧告書は、労働基準法等の法令違反を解消し、過去にさかのぼって是正を求めるために交付されます。
指導票は、法令違反等はないが、そのままにしておくことが望ましくない状況に対して改善を要求するための文書です。
労働基準監督署から、是正報告書の提出期限を定めて、指摘した事項についてどのように改善を行ったのかを報告することを求められます。
確かに労働基準監督署の呼び出し等は任意であり、状況によっては拒否することも可能です。
ただし、理由無く拒否することについての労働基準監督署の心証は悪いです。
では、相談者のように、臨検監督を拒否することはできるのでしょうか。
いいえ。臨検監督は、労働基準法120条によって、拒否すると罰金の罰則を受けると定められています。
実際にはすぐに罰金となることはまずありませんが、拒否による印象は極めて悪い。労働基準監督署側からすると「何かを隠しているのでは」と、疑惑が深まるばかりです。
理由もなく拒否をして立ち入り調査を拒んでいると、前触れ無く強制捜査を受ける可能性が高まります。
臨検監督に対しては、可能な限り誠実に対応するべきです。
普段から労働関係法令を管理する体制を整えておけば問題はありません。
軽い指導だけで終わることもほとんどです。
仮に労働関係法令を遵守した体制が整っていなかったとしても、慌てる必要はありません。
おどおどせず、監督官が求めることに対して誠実に答えることが重要です。
あるものはある、ないものはない、しっかり答えるべきです。
不備があれば是正報告を誠実に行えば問題有りません。
初回から送検されることはまずありません。
絶対にやってはいけないのは、虚偽報告です。
存在しない書類をあったかのように取り繕うと、送検される可能性が高まります。
以上のとおり、労働基準監督署の調査には誠実に応じることが必要です。
安易に拒否をしてしまうと、場合によっては「ブラック企業」の烙印を押されてしまうリスクがあります。
こうした場合の企業イメージの低下は大きな打撃になります。
やはり、労働基準監督署が入らない体制をしっかりと作っておくことは重要です。
仮に定期監督などで監督が入ったとしても、何も後ろめたいことがないのであれば、労働基準監督署は恐れるに足りません。
そうした体制の構築には、労務管理の専門の弁護士への相談が一番です。
労務管理専門の弁護士は、労使紛争トラブルの解決方法を誰よりも熟知しています。是非ご相談ください。
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