人生100年時代と謳われる時代になり、高齢者の就労意欲は非常に高まっています。
少し古いですが、内閣府の「平成25年度高齢期に向けた『備え』に関する意識調査」によると「60歳以降は仕事をしたくない」という人は僅か11.7%であるのに対して、仕事を続けていきたい人は全体の81.8%を占めています。働きたいと答えた方のうち、50.3%と全体の半数以上が「70歳まで~いつまでも」と答えています。
就業を希望する理由は、60代前半では「生活の糧を得るため」が最も多いのですが、60代後半では「健康にいいから」「生きがい、社会参加のため」といった割合が増えています。
企業においても、技術や経験を持った人材が高齢化し、逆に少子化のために若い世代の人材の確保が困難な状況ですから、高齢者・シニア層の人材活用は必須です。
そして、高齢者雇用安定法に沿った高齢者雇用は企業の義務ですから、これに違反した対応をすると大きなトラブルに発展することがあります。
同一労働同一賃金の観点も重要です。定年後に基本給を6割以下にしたことで、従業員から訴えられた事件もあります(令和5年7月20日名古屋自動車学校事件最高裁判決)。
この事件は、地裁・高裁判決の時点では従業員側が勝訴をしており、高齢者雇用に際しての労務管理に警鐘を鳴らしたものと見ることができます。
現在はほぼ全ての企業で定年制度がありますが、現在の高齢者雇用安定法では60歳以上とするのが義務です。
高齢者雇用安定法では、65歳までの定年延長か継続雇用の制度を選択する必要があります。この雇用確保措置は法的義務とされていますので、雇用継続を希望する労働者を60歳で定年退職とすることは許されません。
さらに2021年4月の高齢者雇用安定法改正によって、70歳までの定年延長又は継続雇用制度が努力義務となりました。
法的義務ではありませんが、今後の人材活用の観点からすれば、遅かれ早かれ70歳までの雇用を見据えた制度設計は必要になるでしょう。
60歳時点の賃金から一定額の引き下げがあった場合に給付される雇用保険の「高年齢雇用継続給付金」の支給額も同時期に従来より5%引き下げとなりました。
高年齢労働者処遇改善促進助成金の廃止もされた事が影響し、会社の高年齢者の雇用機会確保の仕組み・賃金設計を見直す局面に来ております。
これからの高齢者雇用を考える上では、高齢者の人員分布を把握し、その上でどのような制度を採用していくかを検討する必要があります。
定年後の再雇用では年金との調整のために賃金減額をされる企業が多数ですが、それによりモチベーションが低下することもあります。適切な賃金制度や評価制度の設計も検討しなければなりません。
高齢者雇用の検討手順
① 定年延長/継続雇用制度/雇用以外の方法を考えるのか
② 継続雇用制度等の際の労働条件の設定の仕方
③ 賃金制度・評価制度をどのように設定するか
④ シニア世代が選択できる制度設計にするか
高年齢者雇用安定法等の労働関連法規は複雑で、最新の法改正や解釈を把握する必要があります。加えて高齢者雇用制度の設計は、企業の状況やニーズに合わせて行う必要があり、企業だけで対応を行うことは非常に負担がかかります。
企業が法規制を遵守した適切な雇用制度を構築するためには、法的な労務管理の専門家の労働弁護士に相談するのが一番です。
弁護士法人戸田労務経営では、高齢者雇用に対応するための総合サポートをいたします。対応の仕方・進め方にお悩みの際は是非お問い合わせください。
これまで、労務問題についての専門事務所として多くの企業・法人の高齢者雇用についてのご相談を受けており、都度その制度設計を行っております。
社会保険労務士業務も包摂した労務、企業法務の融合した労務対応ができるのは弁護士法人戸田労務経営の強みです。
高齢者雇用についての制度設計から、これに関連する紛争対応まですべてお任せいただけます。
高齢者雇用制度トータルチェックにより、現在の高齢者雇用の課題発見、対応のスケジュールを策定します。
賃金制度設計、同一労働同一賃金対応、職務給制度導入等を検討します。
最終的には、高齢者雇用規程の作成による制度の構築を行い、個別にトラブルのない雇用契約書の作成もサポートします。
従業員との労使トラブルについて、代理人対応も含めて万全にサポートします。
労務応援コンサルティングとは?
労務応援コンサルティングは、弁護士法人戸田労務経営オリジナルの顧問契約サービスです。
弁護士法人戸田労務経営では、顧問契約のC・B・A・S・SSの各プランに応じて、労務の各ステージに応じた顧問サービスを行っています。
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従業員の平均年齢が上昇しており、高年齢者雇用の実務対応が「初めて」必要となっているお客様も多々ございます。
弁護士法人戸田労務経営では定年・継続雇用制度の規程ならびに賃金制度の見直しを始めとし、会社の担当者が定年を迎えようとしている従業員に対してどのようなアプローチを取っていくか・継続雇用制度の対象となった従業員の業務設計(定年前従業員とのバランス取り)・役職定年を設けるか、などの個別対応も数多く行ってきました。
定年後の再雇用についてのルールが未整備の会社も多く、高齢雇用安定法に沿って、実態に合った制度設計・規則の整備を行わせていただいた企業様は数多くございます。
その際には同一労働同一賃金の観点もクリアしなければならず、裁判例を踏まえて対応するということがとても重要です。
高齢者雇用については、定年後の労働条件や給与制度をどのように考えるかは重要な課題です。ある企業では、高齢者の人材活用が必須な状況でしたので、最新の他社事例をリサーチして共有し、会社にあった制度構築のお手伝いをしました。
高齢者の希望に合ったコースの区分の設定や、賃金制度の座組、人事評価制度の導入を含めてのサポートを行いました。