旅館・ホテルは新型コロナウイルス感染の疑いがある宿泊客の宿泊を拒否できるか?

弁護士法人戸田労務経営です。

 

2月16日、千葉県中小企業団体中央会主催で、千葉県内の旅館・ホテル業の企業向けの研修を担当しました。

「新型コロナ禍を乗り切る!企業の労務・法務対応」というタイトルです。

旅館・ホテル業界は今非常に厳しい状況にありますが、何とかこの危機を乗り切っていただきたいと思っています。

 

さて、その中で話題になったのは、やはり感染者・感染疑いの方への対応でした。

 

1 新型コロナウイルス感染の可能性・症状があるだけで宿泊を拒否できるか

【質問】

新型コロナウイルス感染予防のため、「37.5度以上の発熱の方や風邪症状のある方」等の宿泊をお断りしたいと思っているのですが、問題はないのでしょうか。

【回答】

単に、体調不良(軽い発熱、咳症状等がある)というだけでは宿泊をお断りするのは難しいというのが結論です。

ただ、新型コロナウイルス感染がPCR検査で陽性となっている場合、又はかなりの高熱が続いている方の場合は、感染症疑いによって拒否できる可能性があります。

 

【解説】

宿泊客の宿泊拒否という対応は、下記旅館業法との兼ね合いで問題が生じます。

○旅館業法(昭和23年法律第138号)

第五条 営業者は、左の各号の一に該当する場合を除いては、宿泊を拒んではならない。
 一 宿泊しようとする者が伝染性の疾病にかかつていると明らかに認められるとき
 二 宿泊しようとする者がとばく、その他の違法行為又は風紀を乱す行為をする虞があると認められるとき。
 三 宿泊施設に余裕がないときその他都道府県が条例で定める事由があるとき。

上記でいえば、「伝染性の疾病にかかっていると明らかに認められるとき」という判断は非常に難しく、PCR検査で陽性結果が出ているにも関わらず宿泊しようとしたケースでない限り難しいと思われます。

もっとも、38度以上等の相当の高熱が出て数日間も経過しているような方の場合は、新型コロナの他、インフルエンザの感染疑いもありますので、上記5条①に該当して拒否できる余地はあります。

発熱がある等という状態のみでは、単なる風邪の可能性もありますし、上記5条①の拒否要件には該当しないかと思われます。

 

2 感染防止措置に協力してくれない宿泊客について

【質問】

宿泊客の方には、マスク着用、消毒、検温を徹底しています。

ほとんどのお客様はご協力していただけるのですが、時に理由もなく拒否される方もいます。こういった方に宿泊をご遠慮いただくことはできるのでしょうか。

【結論】

単に拒否した、というだけでは旅館業法5条違反になる可能性が高く、拒否はできません。

ただ、何の理由もなく、マスクも消毒も協力しない、暴言を吐いて旅館側のお願いを全く無視する等の事情を総合的に見た場合に、周囲の宿泊客への風紀を考慮して宿泊拒否することもあり得るかと思います。

【解説】

確かに、昨今の新型コロナウイルス感染症予防の必要は高く、マスク着用、消毒、検温その他の感染予防措置は宿泊客の皆様にも必要なことです。

ただ、こうした点はあくまでも任意に協力を求めるにとどまりますので、強制的な命令は難しいでしょう。

そのため、単純に拒否しただけでは宿泊拒否は難しいと思われます。

 

ただ、問題は感染防止措置を正当な理由なく拒否し続けるケースです。周囲の宿泊客への迷惑を省みずに宿泊し、周囲への迷惑を及ぼす場合は問題です。

こうした場合は、上記旅館業法5条②「風紀を乱す行為をする虞があると認められるとき。」に該当するかどうかです。

難しい判断ではありますが、たとえば風邪症状がありつつ何の理由もなく、マスクも消毒も協力しない、暴言を吐くなどなどの事情がある場合はどうでしょうか。

こうした問題行動を総合的に見た場合に、周囲の宿泊客への風紀を考慮して宿泊拒否することもあり得るかと思います。

 

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