1 弁護士業界の厳しさ~弁護士数の激増・大競争時代
司法制度改革により、司法試験の合格人数は従前よりも跳ね上がり、弁護士は激増しました。以下のとおり、弁護士数は2004年から2021年の間でおおよそ2倍、法律事務所数も約1.5倍にまで増加しています。
※日本弁護士連合会 基礎的な統計情報(2021年)より
https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/statistics/2021/1-3-8.pdf https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/statistics/2021/1-4-1.pdf
もちろん、この弁護士数の増加は悪いことばかりではありません。企業内弁護士を始めとし、弁護士が活躍する分野や範囲は種々多様なものとなっておりますし、地方で活躍する弁護士は間違いなく増えました。
弁護士の業界内では否定的な意見が多いところですが、個人的には法科大学院の設立、合格者の増加について意義は十分にあったと思います。特に私自身は法科大学院での教育内容自体は、法律実務家としての専門性を磨くためには非常に素晴らしい内容だと思っています。
2 弁護士が生き残るには
ただ、このような弁護士数の激増は、弁護士自身が生存競争に打ち勝つ必要があるという意味では、非常に厳しいものです。
弁護士に希少価値があった時代は、黙っていても仕事が来ていたのですが、今はそんな時代ではありません。
一般民事だけではありません。企業法務分野でも、既に精度の高い契約書チェックのAIが開発されていますし、法律相談・書面作成も可能になるようです。弁護士の仕事はAIに代替されない、ということが数年前の調査結果にあったように記憶していますが、AIが弁護士の仕事を奪っていく時代はもうすぐそこに迫っています。
弁護士も、他の法律事務所に負けない、そしてAIに負けない強み(専門性)と付加価値をつけていかないといけないと思います。
3 弁護士が労務専門弁護士を利用する?~労働事件の専門性を身につけるには
そうした中、弁護士の先生方が弁護士を活用する事例が増えています。
今までであれば、弁護士が対価を払って弁護士を利用する、というのはかなり限られたケース(たとえば懲戒請求をされた場合の代理人等)だったと思います。
ですが、今は専門性を活用する上で弁護士を活用するというケースです。
弊所でも法律事務所の労務顧問を多数担当していますが、各事務所のニーズは確かに様々です。
① 労働紛争の経験豊富な弁護士の意見を聞く
それまで労働事件や労務対応の経験がそれほど多くないということで、アドバイスを随時受けたいというニーズがあります。
労働事件は東京地裁等で専門部が置かれる専門分野の一つです。労使にまつわる数々の法律、企業ごとの規則等のルールがあることを始め、扱ったことがないと、弁護士であっても「相場感」が全くわからないものです。
これはもう経験を積む以外に身に着けることはできないものです。労使交渉、労働審判、労働訴訟の各手続の経験数が物を言います。労務管理についてはまた全く別の経験値が必要で、企業と相対して実情に合わせた労務管理に入り込んだ経験が重要です。
こうした経験からくる肌感覚や見通しについては、経験した弁護士に直接聞くのが手っ取り早いですし、経験値の共有になります。
紛争化した場合にすぐに相談したり、時には手に負えない事件として対応を任せてもらうこともあります。顧問先の問題をワンストップで解決することができます。もちろん、場合によっては共同で事件対応に当たることで経験値を積むことも可能です。
② スキルや知識をブラッシュアップするための研鑽の機会を得る。
労働事件の経験がある弁護士による労働判例解説・労務問題対応などの研修・セミナー・勉強会等の参加も有用です。一から労働法を体系的に学ぶことや、労働実務の疑似体験ということも重要な要素だと思います。
こうした研修は日弁連のEラーニング、各弁護士会が主催する研修が主流ですが、今はDVDの販売もありますし、興味のある分野にフォーカスしたセミナーを積極的に受講することは重要です。私も、これまで弁護士会に限らず、弁護士向けか否かを問わず、数々の研修に参加してきて、知見を磨いてきたつもりです。
なお、弊所でもレガシィクラウド様より弁護士向けのDVDを多数販売しております。(※顧問先には無料謹呈をしております。)
③ 顧問先との対応の仕方を身に着ける
今弁護士としての活躍の場として、今注目されているのは中小企業の顧問業務です。特にニーズが日常的かつ継続的に生じる労務分野については、企業の皆様が求めていることです。
私自身、弁護士の皆様からも顧問先の獲得方法についてのご相談をしていただくことも数多くあります。弊所の経験談であったり、自主セミナーの開催についての集客方法や実施のアドバイスを行ったりすることもございます。また、顧問先との契約の仕方から、実際の対応についてもアドバイスをさせていただくことがあります。
④ 弁護士としての労務コンサルティング業務の策定
上記の顧問先への対応に関連しますが、漫然とした顧問対応ではニーズは探れません。
「顧問弁護士としてどういう場面に何ができるのか」という観点で、オリジナルの顧問メニューやコンサルティングプランの策定をしなければ、決して企業の皆様のニーズには届かないと思います。
そのメニュー・コンサルティングプランの策定については、実際にそのような取り組みをおこなっている弁護士の知見を借りるとよいと思います。
⑤ 執筆・セミナーなどでブランディングする
弁護士としてのブランディングのためのセミナーや書籍執筆は増えています。執筆の機会やその時間を得ることは簡単ではないかもしれませんが、自主セミナーや勉強会から始めていくのもよいかと思います。
⑥ 法律事務所の人事労務体制の構築をする
また、全国の法律事務所は、弁護士と雇用する事務員を合わせても零細企業と同程度の人的規模しかないことが多いです。そして、弁護士自身が経営者とプレーヤーを兼ねることも多いため、所内の人事労務が不十分であるケースも多く見られます。
ただ、一定の規模感になってくると所内の規則整備に始まり、人事制度を作っていくことも必要になります。
これは一般企業と同様の労務ニーズですが、自社の労務体制を整えることで、大きな発見もあることかと思います。
4 弁護士法人戸田労務経営の弁護士業務応援サポート
弁護士法人戸田労務経営では、上記の弁護士活用をしていただける「労務管理アドバイザー」を行っています。
労務管理アドバイザーは、弁護士による士業業務フォローとしての「新しい士業連携の姿」を目指すものです。現在全国の法律事務所の先生のフォローを行い、好評を得ております。ご検討いただけますと幸いです。
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