労働者にとって死刑宣告にも等しい解雇処分。「労働問題総合相談サイト」では、これまで数多くの解雇事件を解決してきましたので、一部の解決事例を紹介します。
1 交渉による早期解決
弁護士による交渉によって、早期に労働トラブルを解決することが可能です。特に復職を目指す場合は、早期に合意による解決を目指すことが重要です。
金銭的な解決を目指す場合、一般的に、「交渉では解決水準が低くなる」と言われますが、必ずしもそうではありません。交渉だからこそ逆に高い解決金による解決を実現できることもあります。これは、労働者側・使用者側の両面の立場を熟知した労働弁護士だからこそできる解決です。
① 事業縮小などを理由とする解雇事案につき、解決金の他にも慰謝料の支払も認めさせた事案
相談内容
会社の事業縮小と、勤務態度が悪いこと等を理由として解雇された部長職クラスの方の事件です。
「部長なのに仕事ができない」「本当は懲戒解雇だ」などと、色々な暴言を上司に言われたことから、解雇の撤回だけではなく、慰謝料の請求を含めて交渉をすることとしました。
解決内容
事業縮小という解雇理由については、到底整理解雇の要件を満たすものではなく、また、勤務態度についても、解雇を正当化するようなものではありませんでした。
即座に解雇撤回通知書を送付し交渉を行った結果、早期に解雇を撤回し、復職に代わる解決金を払うことの合意を取り付けることができました。
さらに、会社の発言や対応についての違法性を強く追及した結果、復職に代わる解決金だけではなく、慰謝料の支払いをも認めさせました。
慰謝料の支払までをとれるケースはそうそう多くはないです。強い姿勢の交渉が功を奏した事案です。
② 能力不足による解雇事案を早期に解決
相談内容
建設会社で設計士として勤務していた方が、能力不足を理由に普通解雇された事案です。能力不足を裏付ける事情はなく、交渉案件として対応しました。
解決内容
即座に解雇撤回通知書を送付し、会社代理人と面談交渉を行った結果、解雇を撤回させ、依頼後1ヶ月程度で、半年分の給与を超える解決金の支払を認めさせることができました。
交渉案件であっても数ヶ月の解決期間を要することが多いですが、スピード解決が実現できたケースです。
③ 交渉で懲戒解雇を撤回させ、早期に高額の解決金と退職金を獲得した事案
相談内容
勤務中、社用車で交通事故を起こしてしまい、事故相手を植物人間状態にさせてしまった営業社員の方の相談でした。
刑事裁判で有罪判決を受けた後、会社から懲戒解雇処分とされて、退職金が不支給となったことから、解雇の撤回と退職金の支払を求めて交渉を行いました。
解決内容
復職は実現しませんでしたが、受任後早期に解決し、復職に代わる解決金と、未払いの退職金全額を合わせ、給与の約2年分相当額を得て解決することができました。
交渉案件で給与2年分相当額の金額を獲得することはあまりありません。訴訟ないし労働審判へ移行する強い覚悟を持ちつつ、徹底的に闘う姿勢を示して粘り強い交渉を行ったことが功を奏した結果となりました。
④ 復職を実現した事例
相談内容
会社の職務命令に違反している等との理由で、会社から即時解雇を言い渡された労働者の方の相談でした。
「これまで会社には相当の貢献をしてきたつもりですし、上司の命令に背いたということは全く無いです。何とか会社に復帰したい」とのお気持ちを受けて、復職を目指して交渉しました。
解決内容
解雇事案で復職の実現はそう簡単なことではありません。
妥協することなく会社と交渉を続け、解雇以後復職までの賃金(バックペイ)を会社から支払わせると共に、復職も実現することができました。
復職の実現にあたっては、会社との間で復職後についても協議を重ねる必要があります。また、復職までの金銭保障も問題となりますので、生活費をいかに確保するか、という点についてもフォローが必要でした。
2 労働審判によって早期に適切な解決を実現
労働審判は、スピーディに事件を解決できることが大きな特徴です。
しかも、労使現場の専門家である労働審判員を交えて、裁判所による適切な判断を前提にした解決を実現することができますので、うまく利用すれば、早期に高い解決水準での解決が可能です。
① 交渉では全く応じなかった会社が、労働審判手続において懲戒解雇の撤回を認め、相当額の解決金を獲得した事案
相談内容
会社で窃盗や横領をした疑いをかけられて懲戒解雇をされた労働者の方の相談です。
「全く身に覚えのない嫌疑による懲戒解雇である」と、会社に対する強い憤りをお持ちだったため、労働審判手続を見据えてご依頼を受けました。
解決内容
労働審判前に会社と交渉しましたが、会社は、窃盗や横領の事実を主張して、全くこちらの要求は認めませんでした。
そうしたことから、労働審判を申し立てました。詳細な申立書と証拠の提出の結果、労働審判期日第一回の時点で、既に労働審判委員会は懲戒解雇無効との心証は明らかでした。
第一回の期日で、バックペイを超える解決金を得て、勝訴的和解を実現することができました。
労働審判手続は第一回が勝負です。的確かつわかりやすい申立書を作成し、そして、主張を裏付ける的確かつ最善の証拠の選定が必須です。第一回で完全に依頼者に沿った解決を実現できたのだと思います。
② 経営難を理由とした整理解雇を撤回させつつ、確実な金銭回収を実現した事案
相談内容
相談者はあるチェーン店の副店長クラスの方でした。仕事ぶりは全く問題がなかったのに、会社の経営難だけを理由として整理解雇されたという事案です。
解決内容
整理解雇に理由がないことは明らかなケースだったのですが、経営難は事実です。実際労働審判でも、「金がない」ことを理由に支払を完全に拒否する態度をとってきました。
実は、こういうケースが最も解決に苦労します。仮に審判や判決が出たとしても、資金のない会社から金銭を回収することは容易ではないからです。
しかし、安易に妥協はせず、労働審判官を味方に付けて調停を進めた結果、ある程度の分割ではありながらも、短期かつ多額の解決金での解決を実現しました。
実際にも、全ての解決金を、予定よりも早く回収することができました。
③ 能力不足及び素行不良等を理由とした管理職相当の労働者の解雇を労働審判手続で撤回させ、多額の解決金を勝ち取った事案
相談内容
管理職クラスの相談者の方が、能力不足と素行不良を理由に懲戒解雇された事案です。
とても懲戒解雇に相当するような事情は見当たりませんでしたが、会社は、解雇が有効であることを前提に、給与1ヶ月分の解決金以上は支払わないとの主張を曲げなかったので、労働審判を申し立てることにしました。
解決内容
労働審判になっても、数ヶ月程度の解決ベースの提案をされたため、労働審判官と調停協議を繰り返しました。
その結果、1年分近くの解決金を勝ち取るという勝訴的和解を実現しました。
3 仮処分による早期の権利実現
仮処分は、うまく利用すれば、労働審判以上にスピーディに、そして復職も見据えた解決を実現できます。
保全の必要性の疎明が必要となるので、全てのケースで使えるわけではありませんが、仮処分の利用も積極的に検討しましょう。
相談内容
相談者の方は、復職を強く求めていた方です。身に覚えのない横領の疑いをかけられて懲戒解雇されたのですが、復職を実現すべく、仮処分を選択しました。
解決内容
懲戒解雇撤回は実現できなかったのですが、解雇以外に様々残った問題を全て精算しつつ、バックペイ以上の解決金の支払を早期に勝ち取りました。
会社との様々な問題を一挙に解決できたことも大きかったです。