相談内容
我が社は、全国に多数の支店があります。各支店の店長は、皆管理職として責任のある立場で仕事をしてもらっています。
しかし、先日A支店の店長が残業代を請求してきました。
店長は管理職として扱っていますので、残業代の請求に応じる必要はないですよね?
POINT
「管理職」が、労働基準法で労働時間などの規制が除外される「管理監督者」に該当するとは限りません。
むしろ、「管理監督者」になる場面はかなりレアです。
管理職だからと言って、安易な労務管理は禁物です。
相談が特に多い業種(産業別)
☑建設業 ☑製造業 ☑情報通信業 ☑運輸・郵便業(トラック運送業)
☑卸売・小売業 ☑金融業・保険業 ☑不動産・物品賃貸業
☑宿泊・飲食業(ホテル・飲食店等) ☑教育・学習支援(塾・予備校等)
☑医療・介護福祉業 ☑サービス業
※管理職・役員の管理に関しては、名ばかり管理職という問題も発生した宿泊・飲食業(ホテル・飲食店等)、卸売・小売業、教育・学習支援(塾・予備校等)で多い問題ですが、その他様々な業種で多くの相談があります。
1 労働基準法での「管理監督者」とは何か
管理職の労務管理は特殊な問題があります。
労働基準法においては、「監督若しくは管理の地位にある者」(いわゆる管理監督者)については、労働時間、休息、休日に関する労働基準法の様々な規制の適用がありません。
つまり、管理監督者については、労働時間の制限も、休憩・休日の付与の必要もありません。
残業代の支払の必要もないのです。
管理職の方が「管理監督者」に該当するかどうか、この点は労務管理に大きな影響を与えます。
2 「管理職」=「管理監督者」なのか?
実際、支配人、支店長、店長、部長など、会社によっては様々な立場が「管理職」となっています。
会社が定める「管理職」全てについて、労働時間等の規制が除外され、残業代の支払いも必要無いのでしょうか。
そうではありません。労働基準法での「管理監督者」が「管理職」になるとは限らないのです。
「管理監督者」に該当するかどうかは、名称では決まりません。
実務では、資格や名称などにはとらわれず、職務の内容、権限、責任、勤務態様などの実態に基づいて判断することとされます(昭和63年3月14日基発150号)。
3 実際の「管理監督者」はかなり限られる
そして、管理監督者に該当するかについては、次の3点から判断されます。
⑴ 職務内容、権限、責任が重要なものであるかどうか
企業の経営方針への関与するほどの権限と責任を持っているかどうかは重要です。
企業経営に関わる方であれば、「管理監督者」であることの積極要素となります。
また、労務管理の権限を持っているかも重要です。
たとえば、部下の採用や退職を自由に決定できる権限を持っている方は、「管理監督者」に近くなります。
⑵ 勤務態様や労働時間に裁量があるかどうか
自分の勤務の仕方や労働時間を自由に決めることができる方は「管理監督者」に近くなります。
たとえば、タイムカードの管理をされていない、出勤・退勤は全くの自由で、遅刻しても何のペナルティもない、という方です。
⑶ 賃金等の待遇が十分かどうか
残業代等が払われないことに見合うだけの待遇が必要です。
たとえば、一般的な従業員とは一線を画するほどの好待遇がないと、「管理監督者」とは言いがたいケースが多いでしょう。
4 管理職・役員などの労務管理は、弁護士への相談をおすすめします。
このように「管理監督者」は、「管理職」という名前だけではなく、かなり経営的立場に近い実態が必要です。
実際には、現場のプレーイングマネージャーのような立場の方では、まず「管理監督者」にはなりません。
非常に厳しいと考えた方がよいでしょう。
安易に「管理職」だから残業代は払わない、という扱いをしていた場合、突然管理職・役員から労働審判や民事訴訟を起こされ、莫大な残業代等を請求されるリスクがあります。
その多大なコストとリスクは甚大です。
こうしたリスクを避け、適正な労働時間の管理を行うためには、労働実務を踏まえた判断・手続が不可欠ですので、法的な労務管理の専門家の労働弁護士に相談するのが一番です。
もし、会社として適切な労働時間の管理の方法を検討しているのであれば、労働弁護士のフォローを随時受けながら、適切な方法で行っていくことが不可欠です。
お気軽にご相談ください。
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