相談内容
当社は不況のあおりを受け、どうしても人員削減をしなければならない状態です。
従業員に対して退職勧奨をしようと思うのですが、退職勧奨が違法になってしまうケースもあると聞きます。
退職勧奨をする際の注意点について教えてください。
POINT
退職勧奨自体は自由ですが、強制的な手段による退職強制をした場合、損害賠償を請求される可能性があり、仮に任意退職の意思を示したとしても効力が否定されることになります。
微妙な判断を要しますので、労務の専門弁護士に相談しつつ進めることをお勧めします。
相談が特に多い業種(産業別)
☑建設業 ☑製造業 ☑情報通信業 □運輸・郵便業(トラック運送業)
☑卸売・小売業 ☑金融業・保険業 ☑不動産・物品賃貸業
☑宿泊・飲食業(ホテル・飲食店等) ☑教育・学習支援(塾・予備校等)
☑医療・介護福祉業 ☑サービス業
※退職勧奨に関する相談件数が特に多いのは、製造業、情報通信業、卸売・小売業、医療・介護福祉業、サービス業ですが、従業員の退職を考える際のトラブルですから、業種を問わず多くの相談があります。
1退職勧奨の考え方
不況時や定年前高齢者の削減策として、会社が労働者に対して合意解約や辞職としての任意退職を促すことがあります。
こうした退職の勧奨を退職勧奨といいます。
退職勧奨は、任意の退職を促すだけですので、基本的には会社が自由に行うことができます。
もっとも、労働者の任意の意思を尊重する態様で行うことが必要です。
「退職強制」ととられると、違法な退職勧奨になってしまい、①損害賠償を請求されてしまう可能性がありますので注意が必要です。
また、強制した結果、労働者がやむを得ずに任意退職に応じたとしても、②労働者が詐欺・強迫取消(民法96条)・錯誤無効(民法95条)を根拠に、任意退職の無効を主張してくる可能性があります。
2退職勧奨によって損害賠償を請求される場面(①)
では、違法な「退職強制」となって、損害賠償責任を負うのはどんなケースでしょうか。
文字通り、単なる説得を超えて、半強制的な執拗な退職勧奨行為に至ってしまうケースです。
裁判例では、以下のような判断基準を用いています。
【日本アイ・ビー・エム事件-東京地裁平成23年12月28日判決】 労働者が自発的な退職意思を形成するために社会通念上相当と認められる程度をこえて、当該労働者に対して不当な心理的威迫を加えたりその名誉感情を不当に害する言辞を用いたりする退職勧奨は不法行為となる |
3退職届が詐欺・強迫取消(民法96条)又は錯誤無効(民法95条)とされる場面(②)
典型的なものとしては、正当な解雇事由がないにもかかわらず、「退職届を出さないと解雇(懲戒解雇)にする」と告げて退職勧奨をする場面です。
そうした発言によって、解雇処分を避けるために退職届を提出したとしても、それは詐欺や強迫・錯誤(勘違い)によるものであるとして、結局任意退職の効力がなくなってしまうことがあります。
4退職勧奨の具体的な進め方
上記の考え方からすると、退職勧奨は「任意」の決定をしてもらうのが大前提です。
労働者の意思決定に委ねる形で、粘り強く説得することを考えなければなりません。
以下、注意点です。
① 実施方法
退職勧奨面談3回のうち、2回目面談が約1時間、3回目面談が約2時間に及んだケースで、その面談が長時間に及んだことを理由の一つとして退職勧奨と違法とした事例があります(エム・シー・アンド・ピー事件-京都地裁平成26年2月27日判決)。
以下の点に注意しましょう。
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② 説得の手段
要するに退職の強制につながる方法での説得は控えるべきです。
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③ 条件提示
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5退職勧奨の進め方に迷った際には、弁護士への相談をおすすめします。
以上のとおり、退職勧奨を安易に進めてしまうと、損害賠償を受けたり、また、任意退職自体が否定されるリスクもあります。
法的紛争化のリスクを見据えた判断・手続が不可欠ですので、法的な労務管理の専門家の労働弁護士に相談するのが一番です。
退職勧奨を進めようとされるのであれば、労働弁護士のフォローを随時受けながら、適切な方法で行っていくことが不可欠です。お気軽にご相談ください。
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