会社がやるべきパワーハラスメント(パワハラ)の防止と対応方法 | 弁護士による企業のための労務問題相談

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会社がやるべきパワーハラスメント(パワハラ)の防止と対応方法

相談内容

当社の従業員Aから、上司Bがパワーハラスメント(パワハラ)をしているとの被害を訴えてきました。なんでも、上司Bが、「なんでこんな仕事もできないんだ」といって、頭を小突いてきたというのです。

上司Bは暴力の事実を否定しています。ただ、周りの社員に目撃者もいるようです。

Aは、Bだけではなくて会社にも責任があると迫ってきている状態です。会社としてはどういう対応をすべきでしょうか。

POINT

パワーハラスメント(パワハラ)については、適切な調査を行うべきです。

パワーハラスメント(パワハラ)の申告が真実であれば、配置の見直しや、懲戒処分なども視野にいれて適切な対応をすべきでしょう。

会社がパワハラ防止対策を十分に行っていない場合は、会社が民事の賠償責任を追及される可能性がありますので、適切な体制作りも不可欠です。

不十分な場合は労働専門弁護士への早めの相談が重要です。

相談が特に多い業種(産業別)

建設業  ☑製造業  ☑情報通信業  ☑運輸・郵便業(トラック運送業)
☑卸売・小売業  ☑金融業・保険業  ☑不動産・物品賃貸業  
☑宿泊・飲食業(ホテル・飲食店等)  ☑教育・学習支援(塾・予備校等)
☑医療・介護福祉業  ☑サービス業

※パワハラについては、業種を問わず様々な業種で多くの相談があります。

1 会社がパワーハラスメント(パワハラ)へ対応する重要性

⑴ パワーハラスメント(パワハラ)とは

パワーハラスメント(パワハラ)とは、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える、又は職場環境を悪化させる行為をいいます。

パワーハラスメント(パワハラ)の訴えは近年とても増えています。

会社としては、従業員の訴えに対し、適切な対応をとることが求められています。

パワーハラスメント(パワハラ)が起きた場合、加害者が責任を負うだけでは終わりません。

会社も、使用者責任(民法715条)による賠償責任、職場環境を十分に整えなかったこと等を理由に、安全配慮義務違反による債務不履行責任(民法415条)による賠償責任を負う可能性があります。

そうした民事上の賠償責任だけではなく、パワーハラスメント(パワハラ)の発生によって、会社内の士気の低下等、様々な悪影響があります。

現在、パワーハラスメント(パワハラ)発生を防ぐことは、企業にとって重要な課題です。

【従業員のパワハラによって会社が多額の慰謝料を負担したケース】
部下Aと上司Bの出来事。Aは非常にアルコールに弱かったが、出張中の仕事でBに迷惑をかけたことからBの酒の勧めを断れなかった。Aは少量の酒で吐いていたが、それでもBは「酒は吐けば飲める」と言ってさらに酒を強要した。さらに、翌日、Aは「酒で体調が悪い」と言ったが、Bは「関係ない」と、車の運転を強要した。
BがAに対して出張後に一旦帰社せよと指示をしていたところ、Aが無視して帰宅してしまった。そのため、怒りの収まらないBは、Aに対して深夜「私、怒りました」と留守電に入れたこともあった。
Bは、Aの夏季休暇中に、やはり深夜に「辞めろ!辞表を出せ!ぶっ殺すぞ、お前!」と激しい口調で留守電を入れた。
こうしたBのパワハラによってAは適応障害となり、休職し、結局自然退職に至った事案で、会社はBのパワハラの責任を負うことになり、150万円の慰謝料を負担する結果となった(東京地判平成24年3月9日)

2 社内でパワーハラスメント(パワハラ)を防ぐ体制を作る

パワーハラスメント(パワハラ)を防ぐ体制を作るためには、会社はどのような対応をするべきでしょうか。

パワーハラスメント(パワハラ)は、加害者側が日常的に行うことが多く、被害者も声を上げにくく、周囲の対応もされにくいものです。

会社が放置すると被害が悪化する傾向にあります。

ひどい事例では、パワーハラスメント(パワハラ)の放置によって被害者が精神疾患を患って自殺をしてしまう、という最悪の結果を招くこともあります。

そうした最悪の結果は当然、そこまでいかなくとも、慢性的なパワーハラスメント(パワハラ)の蔓延を防ぐために、会社としてできる体制を作る必要があります。

厚生労働省のセクハラ防止指針(平成18年厚生労働省告示第615号)を参考にするとよいでしょう。

① パワハラに関する使用者の方針の明確化と周知・啓発

就業規則や書面によって明確にパワーハラスメント(パワハラ)の定義をしつつ、会社としてどういう対応をするのかを従業員に周知し、教育すべきです。

② 相談窓口の設置と適切な対応

パワーハラスメント(パワハラ)の被害に遭った労働者が気軽に相談することができる体制を作ることが重要です。

③ 迅速な事実調査と加害者・被害者への適切な措置、再発防止措置

また、相談に対し、事情を適切に聞き取り、パワーハラスメント(パワハラ)の被害が発生している疑いがあれば、調査を適切に行うことも重要です。

場合によっては、両者の人事配置を見直すことも必要になりますし、後で述べるような加害者への懲戒処分の検討も必要です。

ただし、被害者・加害者の聴き取りを踏まえてもパワーハラスメント(パワハラ)とは言えないこともあり得ます。その際は毅然とした対応も必要でしょう。

④ 申告者・調査協力者等のプライバシー保護と不利益取扱禁止

パワーハラスメント(パワハラ)の訴えや、周囲の協力者の話は、プライバシーに踏み込む内容も含まれますので、こうした措置を適切にとることも重要です。

3 パワーハラスメント(パワハラ)を行った社員への対応方法

⑴ 事実調査の重要性

まずは、適切な事実調査です。被害者の言い分を真摯に聴き取りつつも、全て真実とは決めつけることは厳禁です。

加害者とされる人物の言い分もしっかりと聞き取ることが大切です。

実際のところ、パワーハラスメント(パワハラ)との訴えがされたとしても、指導・教育の範疇にとどまることも少なくないのです。

かといって、重大なパワーハラスメント(パワハラ)を見逃してはいけません。

会社の適切な事実調査が第一に重要です。

⑵ 懲戒処分を行うかどうか

パワーハラスメント(パワハラ)の事実が認められる場合、加害者である従業員に対する懲戒処分を検討することも必要です。

戒告・減給・出勤停止・懲戒解雇等の処分をして、厳しく対応することも、パワーハラスメント(パワハラ)に対する適切な対応の一つです。
⇒「懲戒処分の進め方

もっとも、安易な懲戒処分は禁物です。

パワーハラスメント(パワハラ)について懲戒処分を行うかどうかは、以下の点を総合的に考慮することが必要です。

【パワーハラスメント(パワハラ)をした従業員を懲戒処分すべきかどうかの基準】

パワーハラスメント(パワハラ)の具体的態様
パワーハラスメント(パワハラ)の回数
☑被害者の受けた被害の程度
パワーハラスメント(パワハラ)に至る経緯・目的
←指導・教育の目的があったかどうか
☑加害者と被害者の地位や関係
☑業務への影響
☑加害者の反省や謝罪の有無

⑶ 解雇処分までを行うか

こうした観点から、一言にパワーハラスメント(パワハラ)といっても、簡単に処分は決められないことがわかります。

たとえば、仮に加害者が暴力を行ったとしても、軽く頭を小突くとか、肩を押す等、その態様が軽く、加害者としても指導熱心な余りについ手が出てしまった、等という事例の場合はどうでしょう。

この場合にいきなり重い処分は禁物です。

こうしたケースで本人が反省しているのであれば、解雇処分は重すぎますので、不当解雇となってしまうリスクがあります。
⇒「解雇が可能な場合について

4 従業員のパワーハラスメント(パワハラ)は、弁護士への相談をおすすめします。

⑴ 事前予防のための弁護士利用

このように、パワーハラスメント(パワハラ)は未然に防ぐために体制作りが非常に重要です。

リスクを避け、適正な労働安全管理を行うためには、労働実務を踏まえた判断・手続が不可欠ですので、法的な労務管理の専門家の労働弁護士に相談するのが一番です。

もし、安全衛生を検討しているのであれば、労働弁護士のフォローを随時受けながら、適切な方法で行っていくことが不可欠です。お気軽にご相談ください。

⑵ パワーハラスメント(パワハラ)が発生した場合も弁護士のサポートは不可欠

パワーハラスメント(パワハラ)が起こってしまった後や、労働者から訴えられている場合は、緊急対応が必須ですので、すぐに専門の弁護士の対応が必要です。

すぐにご相談することをお勧めします。

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⇒労使トラブルを万全に防ぐためには継続的なサポートが不可欠です。顧問契約の締結をお勧めしています。(「労使トラブルを万全に防ぐ方法(顧問契約の勧め)」)

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