【相談内容】
先日、我が社を退職した労働者がユニオンを通じて団体交渉を申し入れてきました。
当社には労働組合も無く、これまでこうした労働組合やユニオンとの紛争は経験がなく、とても驚いています。
しかし、今回のユニオンの主張は、全く理由のない主張だと思っています。
当社としても、営業時間中に団体交渉に応じている時間はありませんので、拒否しようと思っているのですが、この対応で問題はないでしょうか。
POINT
労働組合(合同労組・コミュニティ・ユニオン)の団体交渉を理由無く拒否することは絶対にNGです!
相談が特に多い業種(産業別)
□建設業 ☑製造業 □情報通信業 ☑運輸・郵便業(トラック運送業)
☑卸売・小売業 □金融業・保険業 □不動産・物品賃貸業
□宿泊・飲食業(ホテル・飲食店等) ☑教育・学習支援(塾・予備校等)
☑医療・介護福祉業 ☑サービス業
※労働組合の問題に関する相談件数が特に多いのは、製造業、運輸・郵便業、卸売・小売業、教育・学習支援、医療・福祉業、サービス業ですが、近時は業種を問わずユニオンの団体交渉申し入れが行われています。
1 労働組合(合同労組・コミュニティ・ユニオン)とは何か
最近、労働組合との紛争はかなり減ったと言われています。
これは、近年の労働組合組織率の低下と無関係ではありません。
しかし、それでも、会社と対抗する組織としての労働組合の役割は依然として重要とされています。
特に、近年活動が目覚ましいのが、合同労組、コミュニティ・ユニオンです。
合同労組とは、中小企業労働者を組織対象として、企業内部ではなく、一定地域を団結の場として組織された労働組合のことです。
このうち、特に、地域労働運動の新たな担い手となっているのが、中小企業のパートタイム労働者などが個人加入する小規模なコミュニティ・ユニオンです(最近、ブラックバイトに特化したユニオンや、エステ業界に特化したユニオン等が話題となっています)。
最近の集団的労使紛争の大半が、合同労組、コミュニティ・ユニオンだと言われています。
こうした合同労組・コミュニティ・ユニオンは、特に企業別の縛りもありませんので、「駆け込み寺」のように労働者が加入することが多いと言われます。
そのため、労働組合に全く無縁だった会社が、突然、合同労組・コミュニティ・ユニオン等から団体交渉の申し入れを受けることも珍しくないのです。
2 労働組合(合同労組・コミュニティ・ユニオン)の団体交渉への対応
こうした労働組合は、労働組合法という一つの法律によって絶対的な権利が与えられています。
その中でも、特に会社が対峙する場面が多いのが団体交渉です。
会社は、労働組合からの団体交渉が申し入れられた場合、交渉の義務を負う事項については、誠意を持って対応すべきとの誠実交渉義務を負っています(東京地裁平成元年9月22日判決)。
したがって、団体交渉への対応は非常に慎重に行うことが必要です。
安易な対応は禁物です。
団体交渉の拒否は、労働組合法上の不当労働行為に該当します(労働組合法7条2項)。
場合によっては、労働委員会に対する不当労働行為に対する救済を申し立てられる事態に発展することがあります。
会社としては、答弁書等の反論書の準備や、調査期日への出張、審尋対応等、非常に多大な対応コストを強いられることになります。
団体交渉には「誠実に」対応するのが基本です。
3 団体交渉を拒否できる場合
団体交渉を拒否できるケースは非常に限られます。
⑴ 労働組合法で保護されるユニオンか?労働組合法の労働者なのか?
まず、ユニオンが、実はそもそも労働組合法上の「労働組合」に該当しない、とか、労働者が労働組合法で予定した「労働者」に入らない、という場合に拒否する余地はあります。
一応確認は必要でしょう。
⑵ 義務的交渉事項の団体交渉か
つぎに、内容の問題です。
団体交渉に応じる義務を負う内容は、「義務的交渉事項」として、①労働条件その他労働者の処遇に関する事項、②労使関係の運営に関する事項等に限られてはいますが、その範囲は広いです。
① 労働条件その他労働者の処遇に関する事項
賃金、労働時間、休日、休暇等の労働条件や、安全衛生、人事配置、昇進、降格等の人事に関することは①に含まれます。
また、職場環境に関する事項や、労働者の解雇・雇い止めに関する事項なども、①に入ってくることになります。
「工場の閉鎖」等、会社全体の経営権に関わるような事項はどうかが問題になることもありますが、これも、労働条件や労働者の処遇に関連する場合は、①の対象になります。
たとえば「工場の閉鎖に伴う今後の人員配置」等が議題であれば、やはり団体交渉に応じる必要のある事項です。
② 労使関係の運営に関する事項
組合掲示板や組合事務所の貸与、時間内組合活動、労使協議のルール等です。
4 団体交渉の申し入れをされた場合、弁護士への相談をおすすめします。
以上のとおり、団体交渉には基本的には応じる必要のあるケースが大半です。
仮に拒否する対応をとる場合でも、法律論や裁判例に則って、適切な判断の下に行う必要があります。
団体交渉拒否として不当労働行為の申立をされるリスクは大きいですから。
とはいえ、団体交渉を恐れる必要は全くありません。
労働組合(合同労組・コミュニティ・ユニオン)からの要求も、法律的には全く理由のない要求に終始するケースもあります。
そうした要求に一方的に飲まれないためには、法律的な理論武装だけではなく、労働組合の要求や追及に対してしっかりと対峙することは不可欠です。
団体交渉の目的も、労使間の適切な妥結点を見いだすことにあるわけですから、会社としても「言うべきことは言い、闘う」ことを大前提に、「妥結すべき部分は妥結する」というスタンスで、労使トラブルを早期に解決することは非常に重要です。
百戦錬磨の労働組合と闘うには、労務管理の専門の弁護士への相談が一番です。
弁護士は、交渉のプロであり、労務管理専門の弁護士は、労使紛争トラブルの解決方法を誰よりも熟知しています。
是非ご相談ください。
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