試用期間の労働者の対応について | 弁護士による企業のための労務問題相談

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試用期間の労働者の対応について

相談内容

当社は先日、正社員の従業員を採用しました。試用期間を決めようと思いますが、期間に制限はありますか。

また、試用期間が終了する際、今ひとつできが悪く、本採用をするかどうか決めかねる場合に本採用の拒否をすることに問題はありますか。

もしくは、様子を見て試用期間の延長も検討していますが、試用期間を延長することに問題はありますか。

POINT

試用期間は余りに長すぎると問題があります。

1~6ヶ月の期間がほとんどで、特に3ヶ月という決め方が大多数です。

本採用拒否も、基本的には解雇と同じと考えられますので、簡単に行うことはできません。

試用期間の延長をするには、就業規則で延長の可能性と理由、延長期間が決められていることが必要です。

1 試用期間の決め方

多くの企業では、正規従業員の採用について、労働者の入社後、一定の期間を試用期間として、この間にその人物・能力・適格性を判断し、正社員として本採用するかどうかを決定するかを決定する制度をとります。

簡単に言えば、試用期間は「見習」期間です。

この試用期間の間で、正式に正社員として本採用されるかどうかが決められることになります。

この制度は就業規則で定められるのが常です。

「試用期間満了までに従業員として不適格と認めたときは本採用を拒否する」等という規定です。

その期間としては、3ヶ月が最も多く、1~6ヶ月が大多数です。

法律上、試用期間の長さには制限はありませんが、必要もなく長期に試用期間にとどめておくことは公序良俗違反で無効になる可能性があります。

長くても1年程度にしておくのがよいでしょう。

2 本採用拒否は自由にはできない

⑴ 本採用拒否ができるかどうか

試用期間が、労働者の不適格性を確かめるものである以上、労働者の能力を確かめる留保解約権が会社にあります。

リーディングケースとなる三菱樹脂事件も、留保解約権の存在を認めています。

【三菱樹脂事件(最大昭和48年12月12日判決)】
①解約権の留保は、採否決定の当初には試用労働者の資質・性格・能力その他の適格性の有無に関して必要な調査や観察に基づく最終決定を留保する趣旨でされるものと把握しつつ、②このような留保解約権に基づく解雇は、通常の解雇よりも広い範囲において解雇の自由が認められてしかるべきであるとした上で、留保解約権の行使も、解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許されると判示した。
そして、解約留保権が認められる場合については、④企業者が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇用しておくのが適当でないと判断することが、上記解約権留保の趣旨、目的に徴して、客観的に相当であると認められる場合である、と定型化をしている。

⑵ 本採用拒否は解雇と同じ

では、労働者の適格性がない場合、自由に本採用拒否が自由にできるかというと、そうではありません。

試用期間は、「労働者の不適格性を理由とした解約権」が留保された、解約権留保付の労働契約と言われていますので、試用期間後の本採用拒否は、解雇権濫用法理の規制(労働契約法)の類推適用によって厳しく判断されます。

試用期間満了だからといって、安易に本採用拒否を行えば、すぐに労使紛争に発展してしまいます。

3 試用期間の延長はできるのか

では、会社は、使用期間中に労働者の能力・適格性に問題がある場合、本採用拒否ではなくて試用期間の延長をすることはできるのでしょうか。

これも自由にはできません。

試用期間の延長は、就業規則で以下を定めるのが大前提です。

  1. そもそも試用期間延長の可能性があること
  2. 試用期間を延長する事由
  3. 試用期間延長する場合の延長期間

これらが明記されていない場合は、試用者の利益のため、原則として認めることはできません。

4 試用期間の判断に迷った際には、弁護士への相談をおすすめします。

以上のとおり、試用期間だからといって安易な判断は禁物です。

法的紛争化のリスクを見据えた判断・手続が不可欠ですので、法的な労務管理の専門家の労働弁護士に相談するのが一番です。

就業規則に書いてあるから、と安易に処分をしてしまうと、後々にトラブルになってしまうケースが多いです。

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