【執筆】代表弁護士の戸田が輸送経済新聞でのコラムを掲載(第9回:従業員の退職トラブル①~突然の別れ?)

弁護士法人戸田労務経営です。

代表弁護士の戸田が物流・輸送業界の専門誌である輸送経済新聞社で運送業での労務問題についてのコラムの連載についての紹介です。

運輸・物流業界の労務・法律問題に精通した企業側労務専門の弁護士として紹介されております。

輸送経済新聞3月1日号掲載の第9回は従業員の退職トラブルについて取り上げました。

記事内容をご紹介します。

※紙面はこちら※

従業員の退職トラブル①~突然の別れ?

最近、インターネットの普及もあり、従業員と会社の労務トラブルが頻繁に起きている。こうした労務トラブルが最も起きやすく、根深く大きな紛争に発展しがちなのは、従業員が退職する時だ。

労務トラブルの背景を見ていくと、実は夫婦関係に近い。それもそのはず、会社と従業員は夫婦よりも長い時間を共にする(ことが多い)ので、わずかなすれ違いが不満につながる。

だからこそ、「別れ」のシーンの退職の場面で、労使紛争が爆発しがちだ。今回から、こうした別れ際の労使トラブルをいくつか取り上げていく。

代行業者を使い急に辞める

まず、最近ホットなのが突然退職。いわゆる「バックレ」の事案に頭を抱えているのをよく目にする。例えば、ドライバーAがある日突然会社を欠勤し、その日に退職代行を名乗る業者から連絡が入る。「Aさんの代わりに連絡します。Aさんは2週間後に御社を退職します。それまでは年休を取得します。退職の手続きに関する資料は郵送で送ってください。本人には一切連絡をしないでください。」と言うのだ。

運送会社にとって、売り上げを出すドライバーの無断欠勤はご法度。当然会社は怒り心頭だ。退職届を持ってくるならまだしも、全く見知らぬ退職代行業者と名乗る人物が、本人に代わって退職を伝えてくる。最近は退職代行業者ではなく、弁護士がこうした退職の代行をする事例も多い。

このような場合、「退職を撤回させたい。その上で厳しく指導してやりたい」という相談を受けることがある。だが、結論から言うと難しい。

去る自由は権利として保護

従業員が退職の意志を固めてしまった場合、引き留める法律がないからだ。法律では、無期雇用の労働者は2週間の予告期間さえ置けば、いつでも何も理由がなくても退職をすることが自由に認められている(民法627条1項)。

理不尽なようだが、かつて強制労働が横行していた時代の反省として、労働者の退職の自由が、憲法の職業選択の自由から派生する権利として、強く保護されているのだ。

退職代行業者は、交渉をしてくると非弁行為として弁護士法に違反することもあるが、単に意思を伝達するだけなら問題なしとされることも多い。

ただ、これは基本的には「無期雇用」の労働者の話。誤解が多いが「有期雇用」の労働者には退職の自由はないので、突然辞めようとしても引き留めは可能だ。

また、引き留めはともかく、何か責任を追及できないか、という相談も多い。

厳密に言えば、民法では2週間の予告期間が必要なので、「今日辞めるので行きません」という場合、2週間の働く義務の放棄(債務不履行)になるので、会社に損害が出れば賠償請求は理屈上可能だ。

ただ、ここでの損害を証明するのは非常に難しいことが多い。さらに言うと、事例のように年次有給休暇の消化を宣言されてしまったら、退職日まで年休で労働免除となるので、債務不履行にはならない。

このように、業員への対応は困難な問題をはらむ。もちろん、見過ごせないほどの悪質な問題を起こして辞めていこうとする従業員に対しては毅然(きぜん)とした対応は必要だろう。ただ、そうでもなければ冷静に対応したい。

実際、突然辞めていく従業員は、会社が気づいていないだけで、在職中から腹に何かを抱えている人がほとんどだ。特に最近は、辞めてから突然残業代請求をしてくるドライバーは、辞め方も突然だったということが多い。労務のほころびが退職事由にも直結する。

そして、辞め方の悪い従業員に対して責任追及をしたいあまりに深追いをし、逆に従業員から残業代請求を受け、何倍・何十倍もの「カウンターパンチ」を食らってしまう事案も後を絶たない。

結局は自社リスクとの兼ね合いが重要だ。「去る者は追わず」でドライな「別れ」を受け入れることが肝要だったりもする。

 

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