労働弁護士の戸田です。
2月9日・2月13日の2日にわたり、社会保険労務士の先生方向けセミナー、「労働弁護士が教える労働審判の全て」を開催しました。
この労働審判のテーマ、ご参加の社労士の先生方に聞くと、「無期転換」「残業代」のテーマ以上に関心のあるテーマだ、と仰ることが多く、関心の高さが窺えます。
実際、失敗だらけの司法制度改革の中の唯一の成功例(?)と言われるのが、この労働審判制度です。
関係機関が集う協議会なんかでも、裁判所からも「労働審判は調停(合意による)解決立7割超えだぞ、すげえだろ」と、自慢げに語っています。
まあ、労働局のあっせんの解決率も悪く、他のADRに至っては絶望的な利用数という状況ですからね。
労働審判は利用勝手がよい!というのは紛れもない事実。
まあ、それも誰が利用するかによりますが・・・
さて、こんな私は、千葉県弁護士会の弁護士向け研修、千葉地方裁判所での労働審判員向け研修でも労働審判を語りまくっていますので、労働審判というテーマは得意分野です。
内容はざっくりこんな感じでした。↓↓↓
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【労働弁護士が教える「労働審判の全て」】
第1 はじめに(本研修の目的)
個別労働紛争の解決のために今一番使われている労働審判手続
↓
労働者側・使用者側の双方で労働審判を数多く経験する弁護士だからこそ語れる労働審判の実態を知る。
↓
労使紛争の解決の実態とそのリスクを知る。
第2 自己紹介
第3 労働審判の基礎知識
労働審判とは?
→今流行の紛争解決手続
⑴ 定義
・個別労働関係民事紛争に関し、
・労働審判委員会(裁判官である労働審判官1名と労使側の労働審判員2名で構成)が
・事件を審理(争点及び証拠の整理)し、
・調停を試み、
・調停が成立しない場合には労動審判を行う手続
⑵ 特徴
① 専門的:裁判官のほか、労務現場を熟知する労働審判員が参加
② スピーディ:初回期日は申立後40日以内で期日は原則3回以内
③ 合意による解決:調停の成立率が非常に高い(70%以上)
第3 労働者側弁護士から見た労働審判
1 一般市民(労働者)にとっての労働審判とは
⑴ 相談の契機
・労働相談窓口の多様さ。
・労働審判を見据えた相談は、ある程度紛争が成熟化している。
⑵ 解決方法の選択・峻別
労働紛争は様々な解決方法が存在する。選択肢が多数。
①個人の交渉(労働相談の利用を含む)
※労働組合員は組合相談→団体交渉
②労働基準監督署に相談・申告
③労働局のあっせん、労働委員会のあっせん等のADR
④弁護士代理による交渉
⑤労働審判
⑥仮処分
⑦民事訴訟
⑶ 労働者が労働審判に求めるもの
イニシアチブを持つのは常に労働者。
ア ⑵の選択肢の中で労働審判に特徴的な部分
①短時間で(迅速性)
②労使現場の判断(専門性)を踏まえた
③納得の行く解決(適切性)
イ 考え方
A 交渉前置主義
B 労働審判積極主義
ウ 労働審判を選択しない例
・仮処分の積極的利用
→早さ+事実認定の両立
・時間外労働手当の請求、第三者証人必須
2 なぜ労働者は本人申立を行うのか?
⑴ 労働審判制度への理解不足
⑵ 弁護士へのアクセスが困難
・敷居の高さ
・労働事件を得意とする弁護士の不在(特に地方)
⑶ 経済的メリットの観点
・請求額数十万円の未払賃金請求
・賃金額が低額であり、かつ期間雇用のアルバイトの解雇事案
・パワハラ事案などで証拠が乏しい案件
3 申立代理人弁護士が労働審判に求めていること
⑴ 早期・適正な解決を求める
①民事調停やあっせんにはない事実審尋
②民事訴訟にはないスピード感と解決の柔軟性
⑵ なじまないと思われる事案で「あえて」労働審判を選択する理由
最終的には依頼者の希望
第4 使用者側弁護士からみた労働審判
1 会社からみた労働審判
⑴ イニシアチブは労働者にある
事前交渉を行って、申立予告があるケースもあるが・・・
① 手続選択の余地無し(欠席不能)
② 期日選択の余地なし
③ タイトな答弁書の準備期間
⑵ 会社側からすると甚だ迷惑な制度?
使用者側の声
① 勝手に裁判の「相手方」にされたとの憤り
② 労働者の申立は間違いだから、何もしなくても真実を決めてくれるはず
⑶ 単純に結論を出すことができない
・組織としての意思決定の撤回判断
・金銭支出の内部決済の関係
2 使用者本人対応の裏事情
⑴ 労働審判対応の放置
⑵ 費用の問題
特に一定の支払を免れない事案では、会社が弁護士代理のメリットを感じないことも多い。
3 相手方代理人弁護士が労働審判に求めていること
⑴ リスク軽減のためにできることは?・・・事情聴取の徹底
①申立書には書いていない甲の問題点
②労働審判期日で労働審判委員3人を味方につける
⑵ 使用者側弁護士の労働審判への心構えとは
※労働審判員の心を掴む7つのポイント(セミナー特典)
第5 社会保険労務士の労働審判への参加は?
1 社労士法2条の2による補佐人参加→×(裁判所の許可必要)
2 許可代理の制度
→千葉地裁では許可事例無し。申立があったが却下された例あり?
3 事実上の同席→事例は少ないがあり得る。
第6 弁護士が労働審判員に望んでいること
1 調停を急がず、充実した事実審尋を行っていただきたい
2 可能な限り当事者の真の意図をくみ取っていただきたい
3 現場感覚に基づいた厳しいご意見もいただきたい
第7 本日の振り返り