労働弁護士の戸田です。
先日10月27日、社会保険労務士の先生方を対象の連続セミナー第1回「有期雇用契約の無期転換対応」を実施しました。
今回はプレミアム(?)な小規模セミナーということで、定員7名で募集させていただきましたが、応募多数につき、2度の増設。
初回も定員オーバーの8名の先生にご参加いただきました!(元船橋支部支部長の大先生にもご参加いただきました)
とても熱気に溢れる、熱く濃く労務を語る2時間。あっという間でした。私も勉強させてもらいました。
次回が楽しみです!!
それでは、セミナー内容をちょっとだけご紹介します。
平成29年度社会保険労務士様向け連続勉強会第1回
「有期雇用契約の無期転換対応」
0 無期転換を控えた実務上のリスクとは?
1 無期転換権の行使に関する法的留意点
1-1 無期転換権行使の制度の確認
⑴ 制度趣旨
① 5年を超えて反復更新されている有期労働契約下にある労働者の雇用の安定
② 常用的雇用への有期労働契約の安易な利用の抑制
⑵ 要件
① 同一の使用者との有期労働契約の通算期間が5年を超えている
② 有期労働契約が1回以上更新されている。
③ 現時点で同一の使用者との間で契約している
⑶ 効果
労働者の無期転換権行使⇒使用者は労働者からの申込みを承諾したとみなされ,期間の定めのない労働契約が成立。
無期労働契約は行使時点で発生するが,無期での就労開始時期は有期労働契約の満了日の翌日から
2 制度導入に伴い想定されるトラブル
2-1 無期転換を防ぎたいという会社の希望
⑴ 雇用調整が困難になる
⑵ 労働条件の切り上げをしたくない。
⑶ 無期社員(正社員)が増えるへの抵抗
2-2 無期転換権を無視して(知らず)雇止めを強行した場合のリスク
⑴ 【ケース1】の検討
⑵ 適用条文の検討
・5年を超える雇い止め・・・労契法18条
・5年以内の雇い止め・・・労契法19条+18条の合わせ技
⑶ 【不当な雇止による三大リスク】
★バックペイ支払リスク→6〜12ヶ月以上の解決金につながることも ★会社の人的対応コスト(交渉・労働審判対応・訴訟対応等) ★会社の名誉・信用毀損のリスク |
2-3 更新上限の設定によって無期転換を防ぐ!? ~落とし穴
⑴ 更新の期待を与えないよう、雇用契約書に明記しているから大丈夫?
⑵ 無期転換権を与える直前に上限を書いたから滑り込みセーフ?
2-4 無期転換権の発生を防ぐために対応をするべきか?
⑴ 考え方
・全有期雇用社員の無期転換を防ぐのは現実的ではない。
⇒臨時の仕事を行う社員のポジションの確立。その社員に限定。
・更新上限についても「経営理念」に基づく説明がベター
2-5 無期転換権を放棄させることはできるのか?
⑴ 事前放棄
不可
⑵ 事後放棄
可能であるが,書面で明確な合意を取るべき。
3 無期転換について対応しなかった場合の労務管理上の諸問題
4 無期転換への具体的対応方法
4-1 無期転換行使に向けての事前準備
⑴ 有期契約社員の現状の確認
・全事業所の人数・氏名を把握(パート・アルバイトも漏らさずに)
・初回契約日,契約期間,更新回数
・とくに平成25年4月1日以降の更新状況⇒いつの時点で無期転換行使が可能になるか
・就業規則,雇用契約書のチェック
⑵ 無期転換権の行使意向の確認
会社の準備のために任意回答を求めることは可。強制は不可。
2ヶ月前にはやっておく。
⇒平成30年4月に発生する場合は平成30年2月頃を目処
⑶ 規則の整備
就業規則がそのままだと,賞与・退職金制度,休暇制度,広範な配転命令権,残業命令権など,本来契約社員やパート社員を想定していない規程まで適用されることになり得る。
4–2 無期転換権の行使に対する具体的対応(規則の整備)
⑴ 社内での無期社員の位置づけを明確にする
① 限定「正社員」としての位置づけ
⇒モデル就業規則はこちらを想定。正社員就業規則をベースにしつつ,勤務地・職種・時間等の限定を設ける。
② 正社員とは区別された「非正規社員」としての位置づけ
⇒非正規なので,賞与,退職金は適用除外。区別を明確にする。
⑵ 労働条件を切り上げる必要はあるのか?
必要はない。
ただし,同一労働同一賃金の法制度に備える必要がある。非正規社員として位置づける場合には,人事異動(転勤,出向,転籍),競業避止義務規定等がなく,責任が相当程度に限定されていることを明確にしておくこと。
⑶ 一般的な就業規則の作成の際の留意点
① 有期契約社員就業規則に無期転換ルールの規定
② 適用範囲の確定
★有期契約社員,パートタイマー以外に「無期社員」「無期フルタイマー」等,無期転換した社員の適用除外を明記
③ 定年退職の規定
④ 賃金の改定,人事異動の規程
⑤ 解雇事由の整備
無期雇用を前提とした解雇事由を列挙する。
⑥ 服務規律・懲戒規定
⑦ 休職制度・定期昇給・賞与・退職金
非正規前提とするのであれば規定する必要はない
ただし,賞与については規定するのもあり。
⑷ 行使のルールを決める
権利が発生した有期労働契約の契約期間中はいつでも行使できる。
口頭でもOKだが,書面通知がセオリー。
就業規則で行使方法・行使時期を定めることはあり得る(不当に制限しなければ合理性は認められるのでは)