公務員の懲戒処分(公務員の労働トラブル) | 弁護士による企業のための労務問題相談

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公務員の懲戒処分(公務員の労働トラブル)

【相談内容】

私は市の懲戒処分を行う担当者です。 先日、市の職員が、忘年会の帰りに車を運転して、酒気帯び運転で逮捕されたため、懲戒免職処分として退職手当も一切不支給の処分を決定しました。 ところが、これについて当該職員が審査請求を行ってきました。市としては非常に重大な事案と考えていますので、処分は妥当と思うのですが、いかがでしょうか。

【回答】

公務員の労働問題は、民間企業とは大きな違いがあります。

懲戒免職処分についても、行政側に広い裁量が認められていますが、行政の判断が明らかに誤っていて行政の裁量を逸脱する場合は、審査請求や取消訴訟によって処分の取り消しとなる可能性もあります。

また、懲戒免職処分が取り消されずとも、退職手当処分だけを取り消しがされることもあります。

最近は酒気帯び運転については非常に厳しく判断される傾向がありますので、直ちに裁量逸脱とは言えない事案だとは思いますが、懲戒処分の指針を参照しつつ、慎重な事実認定を行った上で処分を決定することが重要です。

【解説】

1 公務員の労働問題は特殊

⑴ 民間の労働関係との違い

国や地方公共団体と個人の公務員との間には、契約関係はありません。

企業と労働者の合意が前提となる民間企業の労働問題とは大きく異なる点です。

そのため、公務員の労働問題については、労働契約法労働組合法の適用はありません。

公務員関係の規律は地方公務員法や国家公務員法等の法律、人事院規則、条例等によって行われています。

一般職国家公務員については労働基準法の適用も排除されています(一般職地方公務員には労働基準法の適用はあります)。

公務員の労働問題は民間企業のルールとはかなり違うことに注意が必要です。

⑵ 労働問題の適用の違い

一例を挙げると、以下のような違いがあります。

  1. 公務員の給与・勤務時間・休暇等は、契約ではなく法律・条例によって一律に決まる。
  2. 公務員の給与については不利益変更が禁止されない。
  3. 公務員の辞職は自由にはできない。
  4. 公務員の分限処分や懲戒処分には解雇権濫用法理・懲戒権濫用法理がない。

2 分限処分や懲戒処分された場合にできること

⑴ 分限処分と懲戒処分の意味

  1. 分限処分
    分限処分は、「公務の能率の維持およびその適正な運営の確保の目的」(神戸税関事件-最高裁昭和52年12月20日第三小法廷判決)という自治体側の都合によって行われる処分です。
    民間でいう普通解雇等はこれに該当します。【不当解雇された方へ
    たとえば、公務員の資質、能力、性格が原因で分限免職とされる場合(適格性を欠く分限免職)や、公務員の定員の改廃や予算削減などが理由で分限免職とされる場合(過員による分限免職)です。
    いずれも、一方的に公務員を辞めさせられてしまう処分です。
  2. 懲戒処分
    懲戒処分は、公務員関係の秩序維持ために行われる制裁処分です。
    公務員の道義的責任を追及される処分で、軽い戒告から、最も重い懲戒免職等が規定されています。
    民間でも同様の処分があります。【懲戒処分を受けた方へ

⑵ 不当な分限処分や懲戒処分について争う

分限処分や懲戒処分は、いずれも行政に広い裁量権があります。

民間企業の場合は、労働契約法の定める解雇権濫用法理(法16条)や懲戒権濫用法理(法15条)によって、普通解雇や懲戒解雇はそう簡単には認められません。

しかし、公務員については、こうした法理の適用が全くないので、基本的には行政側の判断によって自由に処分を行えることになります。

もっとも、行政の裁量と言っても全く自由ではありません。

行政の判断が明らかに誤っている場合については、その処分の取り消しを求められます。

  1. 処分の前提とした事実関係に誤認がある
  2. (特に懲戒処分について)社会通念に照らし著しく妥当性を欠く場合(目的違反、平等原則違反、比例原則違反、他事考慮禁止違反)

⑶ 退職手当不支給処分について争う

懲戒免職をされた場合、退職手当が全額不支給とされるケースが多いですが、退職手当不支給処分についてのみが取り消される裁判例も存在します。

⑷ 審査請求
以上を争う方法としては、行政庁に対しての不服審査を求めて審査請求を行うことができます。

審査請求は、処分の日から60日以内という期間制限があります。

⑸ 取消訴訟

審査請求で請求が認められなかった場合、裁判所に処分の取り消しを求めて民事訴訟を提起することができます(処分取消訴訟)。

これについても、裁決を知った日から6ヶ月以内の提訴期間制限があります(行政訴訟法14条)。

3 国・地方公共団体も弁護士への相談をお勧めします

⑴ 事前の慎重な検討がとても重要

分限免職や懲戒免職は、被処分者に非常に大きな不利益をもたらしますので、トラブルに発展することがとても多いです。

被処分者は制限期間内に審査請求や取消訴訟を行う必要があり、対応が早いことが多いです。

⑵ 審査請求や取消訴訟の対応は専門の弁護士に相談

今までお話したとおり、公務員関係は非常に特殊であり、労務を扱う弁護士であっても、検討内容を誤ることは多いです。

弁護士法人戸田労務経営の代表の戸田は、船橋市の行政不服審査委員を務めている経験もありますので、行政処分についての専門的知見も持っています。

もし不服申し立てや訴訟等の対応が必要な際には直ぐにご相談下さい。

 

 

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