新型コロナワクチン接種に関する会社・企業の対応Q&A~No2 | 弁護士による企業のための労務問題相談

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新型コロナワクチン接種に関する会社・企業の対応Q&A~No2

弁護法人戸田労務経営です。

最近新型コロナウイルスのワクチン接種でよくあるご質問について、弊所所属の産業医兼務の竹口弁護士の知見も踏まえてまとめた後編になります。

ワークウェア社労士法人様との共同監修です。

※No1はこちら

Q4:労働者が新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を受けたことで健康被害が生じた場合、労災保険給付の対象となりますか?

A4:労働者の自由意思による接種である以上、業務とは無関係と評価されますので、通常は労災扱いにはなりません。

ただし、医療事務従事者や高齢者施設等従事者は労災保険給付の対象となります(厚労省QAより)。

 

Q5:職場におけるワクチン接種状況を把握するために接種情報を取得したいですが、どうしたら良いでしょうか?

A5:ワクチン接種歴は健康情報として要配慮個人情報にあたるため、会社としては、本人の同意を得て情報を取得する必要があります。

また、取得した情報の利用目的についても特定のうえで公表または通知をする必要があります。

具体的な取得方法としては、接種時間の労働時間みなしや特別休暇の付与、勤務シフトの配慮等の労務管理に用いるために必要であるといった説明をしつつ、接種日を報告させるのが現実的と思います。

ただし、情報取得には本人の同意が必須であることから、本人が頑なに情報提供を拒否した場合には情報を得ることは困難です。

 

Q6:会社は、労働者がワクチン接種をした後にどのような配慮をするべきでしょうか。接種後の安全配慮義務はどこまであるのでしょうか?

A6:少なくとも翌日は欠勤や早退できるように配慮が必要と思います。

また、あらかじめ、本人に対しても、業務調整をしておくように十分に周知して自己管理させておくべきです。

接種後翌日・翌々日くらいまで発熱や倦怠感が強く出るリスクがあります。

働けない程度の症状の場合、通常の病欠扱いで構わないですが、体調不良でも無理に出勤をさせたとなると、何かアクシデントが生じた場合、安全配慮義務違反や第三者への損害賠償の問題につながる可能性はないとも言えません。

 

Q7:逆に複数の労働者の接種希望日が重なる場合にQ6の配慮をして休ませた場合、シフトが組めない等、会社の業務に支障が出ることが予想されます。会社から、接種日の変更を求めることはできるのでしょうか。

A7:会社側に具体的な支障がある場合には、ワクチン接種による欠勤を認めないという対応はあり得ます。

ワクチン接種は、あくまでも労働者個人の自由です。労働者が特定の日にワクチン接種を受ける権利はなく、労働日に休む権利はないからです。

ただし、元々の休日に接種予約を入れている場合、変更を求めるのは難しいでしょう。これは労働者の休日を自由に利用しているだけです。

また、労働者がワクチン接種の予約日について事前に年次有給休暇の取得申請をしている場合についても、有休の自由取得が原則となるため、変更を求めるのは難しいです。どうしてもその接種で業務上の支障が大きい場合にのみ、時季変更が認められることになります。

いずれにしても、複数人のワクチン接種で業務に影響があると予想される企業(配車が必要で、かつ副反応配慮が必要な運送会社等)については、可能な限り早めに協議をしておくことが重要です。

 

Q8:接種後のマスクをせずに出社したり、接種していない社員への嫌悪感を示す等に対する職場秩序維持はどうしたら良いでしょうか?

A8: ワクチン接種によって新型コロナウイルス感染を完全に防ぐことができるものではありませんので、ワクチン接種後も引き続き感染予防対策を継続することが重要です。

社会的な感染状況が落ち着くまでは、マスクの着用・手洗いの徹底・食事中の会話禁止など一般的に必要とされている感染予防対策を従業員に命令することは、職場秩序維持や安全配慮義務の観点から可能と考えられます。

また、新型コロナウイルスに対するワクチンを接種するかどうかは、個人の意思を尊重するべきものです。副反応等のリスクを考慮して接種しないと判断することも決して非難されるべきものではありません。当然、接種しない従業員に対して差別的な取り扱いをすることは許されませんし、会社としても従業員間でも差別が発生しないよう教育・啓蒙をするべきです。

なお、ワクチン接種歴は、前述の通り要配慮個人情報にあたりますので、会社が本人の同意なく他の従業員に当人の接種歴を伝えることは原則禁止されています。この点の情報の取り扱いには十分留意が必要です。

 

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