相談内容
私は、アルバイト社員です。会社との契約は1年契約ですが、もう7回更新して8年も働いています。
既にベテランのアルバイト社員でして、実際には正社員の方と比べても仕事内容は変わりません。会社からも「末永くやってほしい」と常々言われています。
最近、私の待遇が正社員と全然違うことに納得がいかず、会社に不満を言ったところ、会社の態度が急変し、突然「もう更新はしないから」と、契約期間満了で雇止めをされてしまいました。
やはりアルバイト社員は立場が弱いのでしょうか?
回答
アルバイト社員であっても労働法規の保護を受ける労働者であることに変わりありません。
特に、正社員との待遇差別について損害賠償請求を行ったり、違法な雇止めに対して地位確認の請求を行う・損害賠償請求を行う方法があります。
解説
1 非正規労働者(アルバイト・パート・契約社員)も労働関係法律によって保護される
ご相談のように、最近はアルバイトの方の労働トラブルが増えています。
「ブラックバイト」という言葉も相まって、ここ最近はアルバイトの労務管理への関心が非常に高まっています。
この問題を考える前提として重要なことは、アルバイト・パートの従業員も、「労働者」であれば、労働基準法、労働契約法等数々の法律によって保護されるということです。
その保護内容は、基本的に正社員等と変わりません。
特に、「契約社員」という場合、期間が定められている場合を指す場合が多いですが、法律の保護は正社員と基本的に同じです。
たとえば、「アルバイトに有給休暇は一切ない」という契約をしたとしても、労働基準法に反して無効になります。
穴のある雇用契約書も少なくありませんので、今一度チェックしてみることをお勧めします
2 正社員との待遇の違いを訴える
⑴ パートタイム労働者が正社員との待遇差別を訴える
パートタイム労働者については、①業務内容と責任が正社員と同一で、②雇用契約の全期間にわたって正社員と同じ転勤や配置換え等に服するパートタイム労働者である場合、賃金、福利厚生等のあらゆる待遇の差別が禁止されます(パートタイム労働法9条)。
⑵ 契約社員(有期雇用労働者)が正社員との待遇差別を訴える
有期雇用労働者は、正社員との不合理な待遇差別が禁止されています(労働契約法20条)。
その判断要素はパートタイム労働者の場合に似ています。
①業務内容と責任が正社員と同一で、②正社員と同じ転勤や配置換え等に服する場合であるのに、有期雇用労働者であることを理由に賃金額が低い等、不合理な取り扱いを受けている場合は、会社に対して損害賠償請求等を行うことができます。
3 期間満了による雇用契約終了の制限
⑴ 有期労働契約の雇用期間のルール
相談者の方のように、雇用契約が1年と決まっている契約を有期労働契約といいます。アルバイトの方や契約社員の方は、こうした有期労働契約になっていることが多いです。
ただし、そうとは限りませんので、しっかりと雇用契約書を確認することは重要です。
有期労働契約は、文字どおり期間が定められた雇用契約です。
ですので、契約法理の大原則としては、定められた契約期間の満了によって労働契約が終了することになります(有期労働契約の終了を使用者が告げることを「雇止め」といわれます)。
更新するかどうかは、会社側の判断とされるのが原則なのです。
⑵ 雇止めも自由ではない
しかし、どんな場面でも雇止めが自由にできるとなると問題です。
たとえば、実際には正社員とほとんど変わらないような相談者の方のような場合でも、自由に雇止めができるとなると、会社は、都合が悪くなったり、労働者を切りたくなった段階で、好きなように労働者を辞めさせることができることになってしまいます。
これでは、解雇を厳しく制限した労働法のルールの意味が無くなってしまいます。
そこで、労働契約法19条は、雇止めを制限するルールを定めています。
⑶ 労働契約法19条の内容
労働契約法19条は、一定の場合、雇止めについても解雇権濫用法理を適用するものです。
労働者の更新の申し込みを拒絶することが、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」には、これまでと同じ雇用条件の有期労働契約が締結されたのと同じ効力を持つとされています。
労働契約法19条は、次の二つの場面で、こうした雇止めの規制がされます。
- 実質的に無期契約と同一のタイプ(労働契約法19条1号)
有期労働契約の更新手続が形骸化している場面が典型です。
たとえば、契約書も交わされないままに契約更新が続けられているケース等です。この場合、有期労働契約が無期労働契約とほとんど同じです。
雇止めの意思表示が解雇と同じである以上、解雇権濫用法理が適用されることになるのです。 - 契約更新への期待を有するタイプ(労働契約法19条2号)
最もトラブルになることが多いのは、このタイプです。
契約更新への期待を持つかどうかは、色々な要素を総合的に考慮して判断されることになります。
一つの事情だけで決まるものではないので、判断については弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
ⅰ 業務内容が臨時的か、永続的か
たとえば、業務内容が一定の期間だけを予定する臨時的なものである場合、更新への期待は低くなります。業務内容が臨時的である場合は大きくマイナスに作用します。
ⅱ 更新回数と勤続期間
更新回数としては3回程度、通算雇用年数が3年程度を越えてくる場合は、更新への期待が高まってくることになると言えるでしょう。
反面、更新が1度もない場合は、更新への期待は低いことが多いでしょう。
ⅲ 正社員と職務・権限・責任が同じか
ⅳ 更新手続の厳格さ
更新の都度に成績や勤怠などを面談等で確認して労働契約を締結しているか、それともこうした手続を踏んでいないか、と言う点です。
ⅴ 更新を期待させる言動があるか
相談者の方のように、「今後も末永く勤めてほしい」とかいう発言は、労働者に更新の期待を抱かせる事情の一つです。
ⅵ 同様の立場の労働者への雇止めの実績
会社の中で、同様の労働者への雇止めが全く行われていない場合は、更新への期待は高まることになります。
4 待遇に不満のある非正規労働者(アルバイト・パート・契約社員)の方、雇止めをされた場合は弁護士に相談を!
⑴ 正社員との待遇差別について損害賠償請求を行う
パートタイム労働者や有期雇用労働者の方は、正社員との差別待遇について会社に損害賠償請求などを行うことができます。
ただし、その際には、業務の内容や責任の重さ、さらには配転等の人材活用ルールといった会社組織全体を見た判断が必要ですので、専門家への相談は不可欠です。
⑵ 違法な雇止めに対して地位確認の請求を行う・損害賠償請求を行う
違法な雇止めをされた場合は、不当解雇のケースと同様に、会社に対して地位確認を求め、契約更新による雇用継続の実現をもとめることが一つの方法です。
また、違法な雇止めに対しては損害賠償を請求していくことも可能です。
→具体的な解決手段はこちら
⑶ 弁護士相談の勧め
ただ、有期労働契約は、期間満了での労働契約終了を前提とする会社が多いです。簡単には更新への期待という労働契約法19条の問題を認めないことから、交渉自体が難航することも多いです。
しっかりと雇止めを争っていくためには、労働案件の経験のある弁護士への相談は不可欠かと思います。そうした弁護士であれば、証拠の収集方法、会社との交渉、適切な法的手続の選択を行い、会社から確実な回収方法をチョイスし、ご提案することができるのです。
お悩みの場合はすぐご相談していただくことをお勧めします。