相談内容
私は毎日朝から出社して、夜遅くまで会社で残業をしています。
会社の所定労働時間は9:00~17:00の休憩1時間で、7時間勤務なのですが、1日平均10時間は働いていると思います。
「君には期待しているから残業もがんばってくれ」とハッパをかけられているので、仕事を終わらせずに家に帰るわけにもいきません。
休日も月に2~3日とれるかどうかです。
最近子供も産まれたばかりなので、はっきり言ってもう残業はしたくありません。
さらに、払われる残業手当は固定の月3万円だけなのですが、時間外労働や休日労働の未払残業代を請求することはできないのでしょうか。
回答
1日8時間を超え、週に40時間を超えて労働している場合は割増賃金を含めて時間外労働の賃金(未払残業代)を請求することができます。
法定休日労働の賃金についても同様です。
月3万円の固定残業代が払われているとのことですが、固定残業代の要件は厳しいので、検討が必要です。
仮に有効であっても、未払残業代の請求はできる可能性はあると思います。
解説
1 労働時間・休日の原則
未払残業代(時間外労働、休日労働の賃金)の問題ですが、まずは労働時間と休日についての基本を確認しておきましょう。
一般的に、たとえば、相談の会社のように9:00~17:00(休憩1時間)等と、会社には所定労働時間が決められています。
休日についても、たとえば、「土日、国民の祝日、年末年始、会社の創立記念日」など、ある程度自由に決められています。
ただ、この労働時間や休日は、労働基準法で決められたルールがあります(労働基準法32条)。
法律で決められた労働時間のことを法定労働時間、法律で決められた休日のことを法定休日といいます。
法定労働時間 ・1日の労働時間は8時間まで ・1週間の労働時間は40時間まで 法定休日 ・休日は毎週1日以上 ・または、4週間を通じて4日以上(変形週休制) |
2 時間外労働・休日労働とは何か
⑴ 時間外労働とは(法内時間外労働と法定時間外労働)
時間外労働とは、広くは所定労働時間を延長して労働させることをいいます。いわゆる「残業」を総称して使うことが多い言葉ですが、法律上は二つの意味に分かれます。
一つは、法内時間外労働というものです。たとえば、相談の会社のように1日7時間労働の会社では、7時間を超えて8時間までの間の労働は、法内時間外労働といわれます。
もう一つは、法定時間外労働というものです。1日または1週の法定労働時間を超える労働のことをいいます。たとえば1日8時間を超えて働くか、1週間40時間を超えた場合は法定時間外労働として、基本的に労働基準法の規制を受けることになります。
ご相談のケースでは、以下のとおりとなります。
⑵ 休日労働とは
休日労働は、広くは所定休日に労働をさせることをいいます。
そのうち、法定外休日労働とは、週休制の法定休日に働くことです。
たとえば、1週間で1日も休みがない場合、法定休日に働いていることになるので、法定外休日労働をしたことになるのです(ただし、変形週休制になっている場合や、振替休日を採用している場合は別です)。
ここは間違えやすいのですが、たとえば土日休みの週休二日制の会社で、土曜日を出勤したからといっても、法定外休日労働をしたことにはなりません。
日曜日が休みであれば、「休日は毎週1日以上」という労働基準法の法定休日ルールには違反しないからです。
3 時間外労働・休日労働をするとどうなるのか
では、時間外労働・休日労働をしていた相談者は、会社に対して何が言えるのでしょうか。
一つは、法定時間外労働・休日労働を断ること、もう一つは時間外割増賃金・休日割増賃金を含めた未払残業代を請求することが考えられます。
① 法律違反で会社は処罰されるのが原則
法定時間外労働・休日労働をすることは、原則として労働基準法違反です。
ただし、三六協定を結んでいれば、直ちに会社が処罰を受けるわけではありません。
多くの会社は三六協定を結んでいるので、従業員に対して時間外労働をさせることができるのです。
ただ、ごくたまに三六協定がないままに時間外労働をさせている会社がないわけではありません。
こうした場合、従業員は時間外労働や休日労働をする義務はないので、法律上は定時に帰宅しても問題はないことになります。
② 時間外割増賃金・休日外割増賃金を支払う必要がある
会社には、労働者が働いた分の賃金を支払う義務があります(賃金全額払いの原則、労働基準法24条1項)。
この義務を果たさなければ労働基準法に違反することになります。
法内時間外労働をした場合も、未払賃金分を会社に請求することができます(ただし、この場合はプレミア付きの割増賃金は請求できません。)。
法外時間外労働・休日労働をした場合は、以下のとおり「プレミア付き」の時間外割増・休日割増賃金を払わなければならないとされています(深夜労働をした場合は、さらに深夜割増賃金がプラスされます。)。
これが労働基準法で決まっています。
時間外割増賃金 ・1日8時間を超える残業(週40時間を超える)→25%増し ・1ヶ月に60時間を超える法外残業→50%増し(ただし、当面中小企業には適用されず、大企業だけでの適用となります。) 休日労働割増賃金 ・休日労働→35%増し 深夜労働割増賃金 ・午後10時~午前5時→25%増し |
時々、会社から「三六協定を結んでいるから割増賃金は払う必要はない!」などという反論をされることがありますが、完全な誤解です。
三六協定は、あくまでも、時間外労働・休日労働をさせても労働基準法違反にならない、というだけのことです。
割増賃金は別途発生しますので、惑わされないように注意して下さい。
4 未払残業代の請求を考えている方はすぐに弁護士に相談
ここ最近、未払い残業代請求は急増しています。
未払残業代の請求というのは、そう簡単ではありません。
法律のルールに従った計算をした上で、会社が主張する様々な反論を法律に従ってクリアして行く必要があります。
正確な金額を適正に請求していくためには、労働案件の経験のある弁護士への相談は不可欠かと思います。
そうした弁護士であれば、証拠の収集方法、会社との交渉、適切な法的手続の選択を行い、会社から確実な回収方法をチョイスし、ご提案することができるのです。
さらに言えば、未払残業代の請求権は3年で消滅時効にかかります。
毎月毎月2年前の未払残業代請求権が時効にかかっていくことになりますので、お悩みの場合はすぐご相談していただくことをお勧めします。
「労働問題総合相談サイト」は、これまで多数の困難な残業代請求案件を解決に導いてきていますので、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
→「労働問題総合相談サイト」の解決事例はこちら
5 「労働問題総合相談サイト」の残業代請求サポート
⑴ 交渉で請求する
内容証明の発送から出発し、未払い残業代を請求します。
未払い賃金の時効は3年ですから、早期に通知を行うことが重要です。
未払い賃金の額等に特に争いがないケースでは、すんなり会社が払ってくることもあります。
⑵ 証拠を集める~証拠が少なくても諦めるな!
タイムカード等の残業の記録が手元に残っていればよいのですが、「そんなの持って帰ってないよ!」ということも多いと思います。
それでも諦める必要はありません。次の方法をとっていくことで残業代請求の糸口をつかむことができます。
- 交渉の中で会社から証拠を引き出す
確実に相手会社が労働時間を管理しているのであれば、相手会社との交渉によって、会社の所持しているタイムカード等の資料の開示を求めていきます。
時には会社に直接足を運んで、証拠を引き出させます。 - 証拠保全の申立て
会社がタイムカードを改ざんする危険のあるケースでは、裁判所に証拠保全の申立を行うことも必要です。
この手続によって、裁判所と共に相手の会社に立ち入り、タイムカード等の記録を保全することが可能です。 - 手持ちの証拠で勝負する。
タイムカードがなくても、メモや手帳、メール等、残業をしていた資料を集めることで証拠とすることも可能です。
確実な証拠となるかどうかは、その資料の内容次第ですので、ご相談下さい。
⑶ 労働審判・訴訟で請求し、回収する
証拠を集めて交渉しても、相手は十分な残業代を払う気が無い。
そうしたら労働審判か訴訟で請求するしかありません。
労働審判か訴訟かは、それぞれの手続の特徴があります。
しっかりご相談させていただいた上で、その事案で最も適切な方法をご提案致します。