サービス残業をしている方へ | 弁護士による企業のための労務問題相談

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サービス残業をしている方へ

相談内容

私は、建設会社の現場責任者として働いている者です。

現場での始業時間の午前9時より前に車で会社の事務所に寄って、他のアルバイト達を乗せて現場に向かうのが日課になっています。

現場作業を終えたら、会社の事務所に戻るわけですが、会社の事務所に戻ってからも書類作成の仕事をやる必要があります。

でも、会社からは、終業の時間の午後5時でタイムカードを切るようにと言われていますので、結局午後5時より後は全てサービス残業です。

私は会社に対して未払残業代を請求することはできないのでしょうか。

回答

サービス残業というのは、賃金不払残業の俗称で、労働時間の過少申告、見せかけの残業禁止、固定残業代のコミコミ払い等、様々な場面で発生します。

ご相談の業務準備時間も、これが業務に不可欠なものであれば労働時間ですし、タイムカードを早めに打刻させられるのも、サービス残業になる可能性があります。労働基準法に従った残業代請求をすることが可能です。

解説

1 サービス残業とは何か

世間では、サービス残業という言葉がよく聞かれますが、サービス残業とは何を指すのでしょうか。

サービス残業は法律用語ではありません。

要は、会社が残業に対して賃金を支払わない賃金不払残業の俗称と言われていますので、その内容は様々です。

⑴ 労働時間の過小申告

サービス残業の典型というべき事案です。相談者の方のように、会社に言われるままに一定の時間にタイムカードで退勤処理をした後、会社に残って仕事を続けるようなケースがあります。

他にも、労働時間を自己申告制にする会社でも起こりがちです。

従業員が時間を申告する際に、労働時間を過小に申告する(ように会社から指示される)ことによって、会社が残業代の支払を免れることが往々にして行われがちです。

⑵ 形の上では残業を禁止する「見せかけの残業禁止」

⑴とセットに使われることもありますが、会社から「うちは残業は禁止です」と言いつつ、「仕事が終わらない人は自主的に残ってやりなさい。ただし残業代は出さないよ」という手法です。

これもありがちです。

もちろん、残業禁止制度という制度を会社が作ることはできるのですが、残業禁止命令の規定整備や周知の徹底等、しっかりとした制度作りがされてないと無効です。

「自主的に残ってやりなさい」と言われている場合、残業をするのが暗黙の了解になっている場合などは、単なる「見せかけの残業禁止」にすぎません。

これもサービス残業そのものです。

⑶ 業務に必要不可欠な作業を「業務外の準備」としてやらせる

一般的なサービス残業とは少しイメージが違うかもしれませんが、業務に不可欠な準備行為(後片付けや着替え等を含む)を行う場合サービス残業の一類型と言ってもよいでしょう。

法律上、所定労働時間外であっても、会社からの指揮命令下に置かれている時間は労働時間と評価されます(最高裁平成12年3月9日判決・三菱重工業長崎造船所事件)。

この判例では、作業着の着用が必要不可欠な業務を行うにあたり、作業着の着用時間や着替えてからの移動時間も含めて労働時間と判断されています。

こうした事件のように、業務に必要不可欠な行為等、会社からの指揮命令下に置かれている時間を無償で行うことも、一種のサービス残業になる可能性があるのです。

相談者の方の送迎についても、会社からの指示に従ってやっている場合は労働時間となる可能性がありますので、その場合も立派なサービス残業です。

⑷ 待機中の「手待ち時間」を休憩時間として扱っている

接客業や警備会社などの業種でよく見られるサービス残業類型です。

つまり、会社からは「休憩時間です」と言われているものの、実際は休憩中も電話が鳴れば出なければならないとか、お客さんが来たら即時に対応しなければならない、というケースです。

警備業では、仮眠時間とは言われながらも、呼び出しがあればすぐに対応しなければならないケースでも問題になります。

休憩時間は、労働者に完全な自由利用が認められている必要があります。

何らかの対応を強いられてしまう場合は、労働時間となります。残業代を払っていなければサービス残業をしていることになります。

⑸ 管理職の名目だけを与えた「名ばかり管理職」に残業代を一切出さない

これは、世間を騒がせた名ばかり店長事件が有名かと思います。

全国チェーンのファーストフード店の店長に、時間外労働の賃金が払われなかったことから大きな訴訟となりました。

結論としては、店長の請求が認められ、会社は裁判所から残業代の支払いを命じられました。

こうした問題は、管理監督者の問題と言われます。

労働基準法41条2号は、「監督若しくは管理の地位にある者」、いわゆる管理監督者については、時間外割増賃金を支払わなくてもよいと規定しています。

この規定を利用した残業代不払い事案、サービス残業は、未だに多く見られます。

店長という名前の社員には残業代は払わなくていい、というように考えている経営者の方はまだ多いのです。

しかし、真の管理監督者はかなりレアと言わざるを得ないのが現実です。

管理監督者というには、名前を整えるだけではダメです。

裁判例を分析すると、以下の3点をクリアしていることが必要ですが、これを全部クリアしている従業員は本当に限られます。

  1. 企業の労務管理を含めた経営事項について関与し、一定の権限をもっている
  2. 労働時間に自由な裁量が認められること、労働時間の管理を受けていないこと
  3. 賃金についても職務内容、権限及び責任に見合った好待遇を受けていること

結局、単に名前だけを管理職にして残業代を支払っていない会社は、「名ばかり管理職」のサービス残業なのです。

⑹ 「基本給は残業代込み」「固定残業手当を払っている」とのコミコミ払い

これまたかなり多いトラブルです。

「基本給に残業代が全部含まれているから残業代は出ないよ」

固定残業手当を払っているから残業代は出ないよ」

こういう説明をして残業代を払わない会社も多いです(私は勝手に「コミコミ払い」主張と呼んでます。)。

会社としては残業代の支払いを上限打ち止めにしたいのでしょうが、この主張もそう簡単には通りません。

固定残業代の支払が有効とされるには、時間外労働等に対応する手当を他の賃金と明確に区別して定額で支払われていることが必要です。

この明確区分という点がポイントでして、ここがあいまいな会社が多いのです。

ここがあいまいなままに残業代を払わないというのは、やはり単なるサービス残業を強いているのと同じです。

実際には就業規則(賃金規定)、給与明細上の記載、実際の運用を総合的に見て、その固定残業制の有効性が判断されることになります。

2 サービス残業をしていた場合はすぐに弁護士に相談を!

実際にサービス残業をさせられていた場合は、会社に対して未払残業代の請求をすることができます。

法定時間外労働になれば、プレミア付きの割増賃金の請求も可能です。
→時間外労働についての詳しい説明はこちら「未払残業代(時間外労働、休日労働分の賃金)を請求したい方へ

未払残業代の請求というのは、そう簡単ではありません。法律のルールに従った計算をした上で、会社が主張する様々な反論を法律に従ってクリアして行く必要があります。

正確な金額を適正に請求していくためには、労働案件の経験のある弁護士への相談は不可欠かと思います。

そうした弁護士であれば、証拠の収集方法、会社との交渉、適切な法的手続の選択を行い、会社から確実な回収方法をチョイスし、ご提案することができるのです。

さらに言えば、未払残業代の請求権は3年で消滅時効にかかります

毎月毎月2年前の未払残業代請求権が時効にかかっていくことになりますので、お悩みの場合はすぐご相談していただくことをお勧めします。

弁護士法人戸田労務経営は、これまで多数の困難な残業代請求案件を解決に導いてきていますので、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
→弁護士法人戸田労務経営の解決事例はこちら「労働のトラブル事例(労働者側)

3 弁護士法人戸田労務経営の残業代請求サポート

⑴ 交渉で請求する

内容証明の発送から出発し、未払い残業代を請求します。

未払い賃金の時効は3年ですから、早期に通知を行うことが重要です。

未払い賃金の額等に特に争いがないケースでは、すんなり会社が払ってくることもあります。

⑵ 証拠を集める~証拠が少なくても諦めるな!

タイムカード等の残業の記録が手元に残っていればよいのですが、過少申告類型のサービス残業をしていた相談者の方のような場合、タイムカードの記録と実際の労働時間がずれることが往々にしてあります。

それでも諦める必要はありません。次の方法をとっていくことで残業代請求の糸口をつかむことができます。

タイムカード以外の証拠として、たとえばメモや手帳、メール等、残業をしていた資料を集めることで証拠とすることも可能です。警備記録やPCログデータが証拠となった事案もあります。

確実な証拠となるかどうかは、その資料の内容次第ですので、ご相談下さい。

⑶ 労働審判・訴訟で請求し、回収する

証拠を集めて交渉しても、相手は十分な残業代を払う気が無い。

そうしたら労働審判か訴訟で請求するしかありません。

労働審判か訴訟かは、それぞれの手続の特徴があります。しっかりご相談させていただいた上で、その事案で最も適切な方法をご提案致します。

 

 

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