1 社会保険労務士業界の厳しさ
① 社会保険労務士は社会的ニーズのある難関資格
社会保険労務士資格は、近年合格率6~7%で推移する難関試験です。
働き方改革・新型コロナの影響等もあり、会社での人事労務は一つの大きな課題となっています。労働者も今はインターネットで多くの労働問題の情報を得ていますし、適切な労務管理体制を整えることは企業規模を問わず必須です。
その中で、企業の労務を一手に担うことのできる社会保険労務士の社会的ニーズは、どんどん高まっています。
② 社会保険労務士はAIに代替される?
しかし、そんな難関資格である社会保険労務士も、将来が保証されているわけではありません。
オックスフォード大学の研究によれば、社会保険労務士の業務の79%がAIによって代替されるという話もあります。
特に、従来の給与計算業務や社会保険手続業務等はAIに代替されてしまう可能性が高いです。弁護士の業界でも、企業法務分野では既に精度の高い契約書チェックのAIが開発されているほどです。
就業規則の作成・チェックについてもAIが代替してしまう可能性があります。既にクラウドでの作成ソフトが多く登場しています。
2 社会保険労務士として生き残るには
そうしたことから、社労士業務として注目されるのは、定型的業務ではなく、企業ごとにカスタマイズして提供するコンサルティング的要素を含む業務です。
① 3号業務の人事労務アドバイス等でコンサルティング
形式的な労務管理サポートをするだけでは生き残ることはできません。
経営者の悩みを聞き出していただき、その企業のためだけの個別のコンサルティングを実施することです。
会社の労務課題を発見、適切な労務管理体制を構築すること、適切な労務運用をサポート、さらに、最新の裁判例や法改正の動向を踏まえ、常に情報をアップデートしなければなりません。
② 2号業務の就業規則作成
就業規則の作成についても、より企業の実態やニーズを汲み上げて、戦略的に行っていくことが必要でしょう。
企業が求める人材活用と労務トラブル防止の観点をふまえて、人事制度を作る・賃金制度を作っていく。その中で就業規則等の規定を提供していく形で、コンサルティングの一内容として位置付けていくことが重要です。
3 社会保険労務士による弁護士の利用法
そうした中、社会保険労務士の先生方が弁護士を活用する事例が増えています。
① 労働紛争の経験豊富な弁護士の意見を聞く
労使交渉・労働審判・労働訴訟等、労使紛争の最後までを知っているのは労務に詳しい弁護士だけです。労使紛争をジャッジする裁判官の価値観や考え方を知り、紛争の帰趨を読むことで、適切な労務アドバイスが可能になります。
② 社労士として顧問業務に付加価値を与える
労務に長けた弁護士と連携をしていることは、顧問先にも安心感を与えます。
紛争化した場合にすぐに弁護士に繋ぐことで、労務問題をトータルで解決することができますし、場合によっては共同で事件対応に当たることもできます。
③ 社労士のスキルや知識をブラッシュアップするための研鑽の機会を得る
弁護士による労働判例解説・労務問題対応などの研修・セミナー・勉強会に参加することで、より深い労務対応が可能になります。
④ 社労士としての労務コンサルティング業務の策定を共同で行う
今後生き残っていく上でオリジナルの労務メニューやコンサルティングプランの策定が必要です。
そのメニュー・コンサルティングプランの策定については、実際にそのような取り組みをおこなっている弁護士の知見を借りるとよいと思います。
連携プランも検討できます。
⑤ 弁護士とタイアップして顧問先企業の対応を行う・セミナー等でブランディングする
社労士×弁護士のタイアップセミナーや書籍執筆は増えています。それだけではなく、共同での顧問先企業の対応がリアルタイムでできれば、企業にとってはこれ以上心強いことはないのではないでしょうか。
4 弁護士法人戸田労務経営の社会保険労務士業務応援サポート
弁護士法人戸田労務経営では、上記の弁護士活用をしていただける「労務管理アドバイザー」を行っています。
労務管理アドバイザーは、弁護士による士業業務フォローとしての「新しい士業連携の姿」を目指すものです。現在全国多数の社会保険労務士の先生の労務管理業務(特に三号業務)のフォローを行い、好評を得ております。ご検討いただけますと幸いです。