退職勧奨(退職強要)に関する労務トラブルを防ぐには | 弁護士による企業のための労務問題相談

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退職勧奨(退職強要)に関する労務トラブルを防ぐには

相談内容

弊社で長年勤めている営業部長について、成績があまりにも悪いので会社としては退職させることを考えています。

ですが、なかなか納得をしないので、1週間に1回呼び出し、「君の成績ではとてもうちでは無理だ。本当はこの成績では解雇が相当だが、今退職届を出せば退職金が出る。君の名誉のためには自分で退職した方が良いんじゃないか」と説得を続けました。

その結果、しぶしぶながらようやく説得に応じて退職届を提出してきました。
退職届が出ている以上、もうこれで退職のトラブルのリスクはないですよね?

回答

やや説得が強引な印象があります。退職を促した状況によっては、違法な退職勧奨(退職強要)として損害賠償されることが考えられます。

また、退職届を出した際、本当は解雇の理由がないのに、解雇があると勘違いしていた場合等は退職届の無効や取消を主張され、労働者としての地位確認や、退職後の賃金の請求を受けるリスクがあります。

解説

退職勧奨(退職強要)とは何か

退職勧奨とは、使用者が労働者に対して、辞職(自主退職)や、労働契約の合意解約の承諾を促すことを言います。

この退職勧奨を行うこと自体は会社による説得行為にすぎません。基本的に会社の自由と言われています。

しかし、問題は、この退職勧奨が、労働者の自由意思を侵害するような手段あるいは態様で行われた場合は、労働者の人格権を侵害する不法行為(民法709条)になります。

よく言われる「違法な退職勧奨」、「退職強要」というのは、この場合です。

労働者側は退職勧奨に応じる義務はない

会社が退職勧奨をするのは自由ですが、当然労働者側もこの退職勧奨に応じる義務はありません。

会社が退職勧奨した場合でも、労働者側に退職の意思がなく、「退職をするつもりはありません!」と明確に断られてしまうとそれまでです。

それでもしつこく退職勧奨をするのは御法度です。退職強要として違法になる可能性が高まります。
仮に内容証明郵便等で、拒否の意思を伝えられてしまったら、きっぱりと退職勧奨は辞めるべきです。

違法な退職勧奨(退職強要)となる場合

⑴ 退職強要になる場面

労働者側が退職勧奨を断ったにもかかわらず、会社が退職勧奨を続ける場合は、違法な退職勧奨(退職強要)になる可能性があります。

特に次の場合は要注意です。

こうした場合、会社は労働者から慰謝料等の請求を受けることがあります。

□ 不利益な扱いを盾に強引に退職させる方向に申し向ける。
たとえば、「応じなければ解雇」「応じないと減給・配転になる」との発言がある。
□ 退職勧奨の説得が何時間にも及ぶ
□ 退職勧奨が何人もの上司で囲んで行う
□ 所定労働時間外での退職勧奨が続ける
□ 嫌だと言っているのに退職勧奨を何度も繰り返す

⑵ 退職勧奨は記録を取られていると思うべき

こうした状況は「言った・言わない」の水掛け論になりがちです。
最近は、後に争う場合の証拠にするために、録音されていることがとても多くなっています。

退職勧奨をする場面は「録音されている」と思って行うべきです。安易な対応は禁物です。

退職届(退職願)の提出が無効となる場合

ところで、退職勧奨が退職届(退職願)が提出された場合でも安心はできません。

会社がしつこく退職勧奨をして、労働者の本心ではないのにしぶしぶ退職届(退職願)を提出してきた場合、その退職の意思の撤回や取消・無効を主張される場合があります。

⑴ 退職届(退職願)の撤回

退職届(退職願)の撤回は、これが労働者の一方的な辞職と評価される場合においては、一度会社にその辞職の意思が届いてしまうと撤回はできません。

ただ、その退職届(退職願)が、あくまでも退職の申し入れ(「○月○日に退職したいので、お願いします」というような退職願等)の場合は、会社側が、その申し入れを承諾するまでは、いつでも撤回することができます。

裏を返すと、退職届を受け取った場合、会社としては退職届の受理連絡を書面で行うことが重要です。

⑵ 退職届(退職願)の取消・無効

また、退職勧奨が強制的で、やむなく退職届(退職願)を提出してしまった場合は、錯誤(勘違い)による無効の主張(民法93条)や、詐欺や強迫による取消(民法96条)を主張される場合があります。

特に、解雇の理由もないのに、解雇があるとの理由で退職勧奨を促してしまったような場合は、詐欺・強迫による取消をされることがあり得ます。

退職勧奨(退職強要)をされた場合の労務トラブル内容

こうして、退職勧奨(退職強要)の場合の労務トラブルとして、不当解雇のケースと同様に、会社に対して地位確認を求め、復職を求められることがあります。
また、また、違法な退職勧奨に対しての損害賠償請求もあり得ます。

退職勧奨は、労使ミスマッチを解消する上での重要な局面です。専門家に相談しつつ、間違いの無いように行うべきです。

 

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